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【1世紀企業 82】 山谷建築店(小樽市)

2024年09月15日

龍宮閣を背景に撮影された住民

             地域住民の期待に応えて
              歴史ある小樽と共に



山谷憲弘社長

 1892(明治25)年に創業した山谷(やまや)建築店の歴史は、初代山谷(やまたに)文吉氏が滋賀県から小樽に移住し、建築工事業を開業したことに始まります。文吉氏は山谷家の養子として迎え入れられ、滋賀県人会からの建設工事の依頼を受けて「みつわ山谷(やまや)」の屋号で事業を開始しました。

 その後、2代目の興吉氏が事業を引き継ぎ、1924(大正13)年に3代目の憲二氏に交代しました。そして憲二氏の時代には、商号を現在の「山谷建築店」に改め、オタモイ海岸の断崖絶壁に34(昭和9)年に竣工した「龍宮閣」の建設を請け負いました。52(昭和27)年に焼失したため幻の建造物と言われた高級料亭龍宮閣は、長い柱を立て、せり出た床を支える京都の清水寺堂と同じ工法(縣け造り)を採用。海面から32メートル、幅4メートルの平地に建てられた眺望絶佳な料亭でした。建設工事は33(昭和8)年に始まりました。当時は自動車もなく、七曲りの道で路幅も狭かったため、資材の搬入には冬季に馬そりとトロッコを用い、足場を組むための丸太を海から艀(はしけ)で陸揚げしていたと言います。基礎を作るにも波打ち際より何十平米もの足場を組み、身体をロープで固定しながらの難工事でした。


 また、36(昭和11)年に設立された小樽保証牛乳の事務所として使われ、小樽市指定歴史的建造物に指定されている「小樽ミルク・プラント」や、北海道最古の料亭「海陽亭」の施工や改修工事も手掛けるなど、小樽の歴史を刻んできました。

 49(昭和24)年には株式会社に法人化し、3代目の憲二氏が代表取締役に就任しました。その後4代目の憲太郎氏が取締役に就任し、2017(平成29)年には5代目の憲弘氏が代表取締役に就任しました。現在は土木一式工事、建築一式工事、大工工事、とび・土木・コンクリート工事を中心に、地域に根ざした事業を展開しています。

 明治以降、港と鉄道の大動脈により発展した小樽のまちは、「北海道の『心臓』」とも言われてきました。その歴史あるまちで、時代の変化に柔軟に対応しながら地域密着の経営方針を堅持してきました。老朽化したインフラも多いことから、公共施設の耐震補強や改修工事を通じて地域社会の安全を支えると共に、民間住宅の修繕工事にも力を入れており、その実績が地域住民からも評価されてきました。

 そして、長橋中学校屋内運動場の耐震補強および改修工事や市営住宅外壁等改修工事、小樽年金事務所耐震補強などのプロジェクトを通じて、地域社会の発展と生活の質の向上を目指してきました。

 今後に向け憲弘氏は「さらなる経営効率化を図りながら、地域に密着して小樽の発展に寄与することを目指しています。創業からの伝統と信頼を守り続け、地域住民の期待に応える企業として、さらに高品質なサービスを提供していく所存です」と語ります。