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【1世紀企業 81】荒井商店(室蘭市)

2024年08月15日

昭和初期の地域のお祭り風景


           地元に愛される商店製鉄所の歴史とともに

荒井健太取締役


 1916(大正5)年、室蘭市輪西町の旧市街地で小さな雑貨店に始まった荒井商店は、今年創業108年となりました。

 初代・荒井竹三郎氏は1870(明治3)年に長野県長野市の農家の長男として生まれました。足が少し不自由だったため、家業の農家は弟に託し室蘭市(当時は室蘭町)輪西地区へ移住します。当時の室蘭輪西地区は、岩見沢から輪西への鉄道開通や北炭輪西製鉄場建設など活況の槌音が響いていました。その後、製鉄所の周辺に労働者を中心とする住宅街が形成されるにつれ商いをする人も集まり、商店街(旧輪西商店街)もできました。

 93(明治26)年、福島県福島市方木田の農家の末っ子として生まれた丹治實氏は、従兄弟である竹三郎氏の妻まつさんに誘われ、室蘭の鉄道学校へ入学します。その後、竹三郎氏の養子となり改姓。荒井商店二代目となります。この頃製鉄所は拡大を続け、旧輪西商店街を飲み込むまでに拡張しました。各商店は移転し、新たな商店街が形成されていきます。

 1918(大正7)年、荒井實氏(旧姓・丹治實)の長男として茂氏が誕生、三代目社長に就任します。荒井商店も製鉄所の発展と人口増加の好影響のもと商売を広げ、現在の販売商品の主軸となる米や酒、塩、たばこの取り扱いが始まります。他にも金物やお菓子、食品類などを幅広く品揃えし、戦中戦後の配給制時代に安定した供給を行うため尽力しました。

 47(昭和22)年に生まれた長男・孝亘氏は高校卒業後、東京の大学に入学。23歳で室蘭へ戻り、四代目社長として現店舗の前身となる「ファミリーストアあらい」を開業し、「セブン-イレブン室蘭本輪西店」「同室蘭輪西店」の2店舗へ業態を変化させます。当初、同業の酒屋が18店舗ほどありましたが、お弁当などの軽食を販売する店舗が少ないことや、製鉄所の独身寮建設が進んでいたこともあり、生き残りを懸けコンビニ店への変更を決断したのです。その後建設された寮には500名程が生活しており、また製鉄所構内では昼食の提供が削減されるなど輪西店でのお弁当やおにぎりの需要が高まり、売上増に繋がりました。

 孝亘氏は88(昭和63)年同友会へ入会。支部幹事を経て2003(平成15)年西胆振支部長に就任します。「当時は小樽や十勝などへの移動例会を開催し、他支部との交流も活発に行っていた」と話します。また「同友会で知り合った西胆振支部会員と共に、衰退していた輪西商店街活性化を目指した複合商業施設『ぷらっと・てついち』建設にも尽力した」と語りました。

 10(平成22)年には後継者である健太氏が入社。店長として50名の社員やアルバイトの勤怠管理や商品の在庫管理など2店舗の運営を担っています。昨年の経営指針研究会で「100年以上地域に必要とされた意味を見つけながら、この先も地域に根ざした店舗展開をし、お客様との絆を大切に感動を届けます」と企業理念を発表し、今後の事業展開を力強く語りました。