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同友会は、中小企業の繁栄と、そこで働く全ての人の幸せを願い、地域社会の発展のために活動しています。

ふるさと守り~変わらないために変わり続ける~/モルツウェル 代表取締役社長 (島根県中小企業家同友会 代表理事) 野津 積 氏

2024年06月15日

 ◆創発的な破壊

 1996年に創業し、現在年商183億円です。3年後に30億円、8年後に100億円と、いわゆる中堅企業の仲間入りを目指しています。食料品製造、施設給食サービス、在宅配食サービス、ソフトウェア開発の4事業を展開。

 

 経営理念は「全社員、社員家族の物心両面における幸福を追求すると同時に全国津々浦々〝健やか〟で〝安らいだ〟地域生活に貢献すること」です。介護施設では同じ時間、同じ場所で、同じ人と同じご飯を死ぬまで食べ続ける。強制給食に成り下がっています。人間が人間らしくあるために、この集団給食を創発的に破壊し、本来持っている食事の力を蘇らせることが我々のミッションだと考えています。

 

 2004年に高齢者食にビジネス参入して最初に始めたのが、安否確認付き在宅高齢者弁当配食サービスです。年に数回は冷たくなった人を発見する過酷な仕事でもあり、何より生きる意欲の消失を目の当たりにしてきました。一生懸命働いたあげく、世の中から取り残され、居場所をなくし、最期は誰も知らない暗い部屋で死に絶える。最期くらいご機嫌な人生だったと言わせたいというのが私の原体験です。

 

 ◆止まらない物流

 私の思いの根幹となっているのが、11年東日本大震災での経験です。孤立している介護施設へ食事を届けに行く際に目にした陸前高田の町は、すべてが流されていました。いつでもそこに存在すると信じて疑わなかったふるさとは、永遠ではなかったのです。

 

 そこで気付いたのは、生き残った人が恐れているのは余震ではなく「物流の寸断」。ふるさとの衰退消滅は、物流の衰退消滅と同義であると悟りました。目指したのは、止まらない物流づくり。そのために何ができるのかと考え「ごようきき三河屋」を始めました。中小企業・NPO・行政が参画し、共同受注・共同宅配による買い物弱者支援事業がスタートしました。

 

 ◆介護施設給食

 40年の日本の高齢化率は、353%まで上昇すると言われていますが、現在の島根県の高齢化率は353%。有効求人倍率も常に全国上位で、人材不足は危機的状況です。人材不足を乗り越えるためには、女性や高年齢者、外国人の活躍と、就労困難者の雇用がカギとなります。

 

 そこでこの全国1796万人いるとされる就労困難者のうち、特に障がい者や「境界知能」に我々は注目しています。松江市内2つの介護施設の厨房で行った実証実験では、障がい者スタッフだけで100%運営に成功。指導員の育成が追いつかないことが課題に上がり、障がい者の気持ちが見えるアプリの開発に注力しています。

 

 ◆経営者とは

 みなさんはなぜ経営者になったのでしょうか?大事なのは選択肢を持ち自分で決めること。選択肢をたくさん持つには強くなること。会社を強くするには学ぶしかありません。本当の学びは実践して挑戦すること。挑戦すればギャップが生まれ、これを埋めるために勉強します。そうしていけば強くなれます。

 

 でも大半の人はその1歩がなかなか踏み出せない、その1歩を踏み出すために大きな目標が必要ですね。差異と共感を起こし続けられる経営者を目指しましょう。(422日、とかち支部定時総会記念講演)

 

企業概要=本社・島根県松江市、1996年創業。全国高齢者施設向け調理済み食品の製造販売、在宅高齢者弁当配食サービス事業など。