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【わが人生わが経営 151】エクセル(有) 代表取締役会長 佐藤 旬一氏(72)(苫小牧支部)

2024年03月15日

 

人生助けられ続けて

モットーは社員利益還元

 

 「人と人のつながりに助けられてばかりの人生。仲間がいてくれたから、こうやって商売を続けることができている」

 

 佐藤さんは1951(昭和26)年、苫小牧市で生まれました。学生時代はバスケットボールに熱中。進学した苫小牧工業高校建築科でも青春のすべてを捧げたといいます。佐藤さんらの学年は〝苫工第2期全盛時代〟と呼ばれ、全道大会に3度出場しました。「当時は練習も厳しかった。1日で3試合出場し、5㌔ほど痩せたことも。バスケットボールが恋人だった」と笑顔を見せます。

 

 高校卒業後の69(昭和45)年、父米蔵氏が創業した佐藤板金工業所(現エクセル)に入社します。佐藤さんは、若い頃から米蔵氏に技術の手ほどきを受けました。米蔵氏は納得のいかない商品を見ると、製作した職員の前で踏みつぶすほど厳しかったそうです。「頑固な父だったが技術は本当にかなわなかった」と振り返ります。しかし、負けず嫌いだった佐藤さんは、むしろその厳しさに鍛えられました。父から学び、時には社員ともぶつかり技術の向上に明け暮れます。次第に米蔵氏からお墨付きをもらい、専務ながら社長業を担うようになりました。そのことで、佐藤さんは貴重な経験を積むことができたそうです。

 

 83(昭和58)年、米蔵氏の後を継ぎ、33歳で代表取締役社長に就任します。

 佐藤さんが社長になった9年後、社員11名と同業の仲間の協力ではじめて売り上げ4億円の大台に乗りました。当時は佐藤さん自身が営業、工事、現場管理などすべてを担っており、寝る間もなかったそうです。この頃からパソコンを駆使し、現場書類のIT化を進めていた佐藤さん。「当時はパソコンを使い、書類を管理する同業者はほとんどいなかった。だからこそ、ここまで仕事をすることができたと思う」と話します。また、道内から同業有志を募り、月1回の勉強会も企画。安全書類の作り方、板金業のアピールなどについて幅広く学びました。

 

 順風満帆に見えた人生ですが、44歳の頃肝臓病が発覚します。これは、売り上げが4億円を超えた翌年のことでした。「人生山あり谷あり。肝臓病のほか、信頼していた人から裏切られるなど苦しい出来事も重なり、事業を辞めようとさえ思った」と回顧する佐藤さん。友人の助けもあり事業を継続しましたが、49歳で肝臓病が再発。3カ月から1年の命と宣告されます。

 渡米し、臓器移植を受けるしか助かる道はなく選択を迫られました。渡米してもドナーが見つかる可能性は2―3%。しかも当時は臓器移植の前例が日本では少なく、大きな危険が伴う手術だったのです。

 

 「妻が背中を押してくれたからこそ渡米を決断できた。今思えば、ドナーが見つかったことは奇跡だった」。2001(平成13)年、妻真理子さんの後押しもあり、佐藤さんは肝臓の移植手術を決意します。無事手術は成功。道内初の臓器移植手術成功者となりました。その後、リハビリや復職に向けた準備に約3年を費やし、見事現場に復帰することができたのです。「巡り合わせで命がつながった。仲間がいたからこそ商売を継続でき、今がある。そして、何より妻には大変感謝している」。

 

 19(平成31)年、事業継承の観点から息子の千文氏に社長を譲りました。「今は(千文氏の)様子を見て、たまに口を挟みつつ仕事をしている」と話します。また、近年は人材確保の一環でインドネシアから2名採用しました。「会社のコミュニティーに溶け込んでくれる上、熱心に仕事を覚えてくれる点などを評価し、貴重な人材として期待している」といいます。

 

 「会社も今年で94年。創業100年を目指し、まだまだ頑張っていきたい」と意気込みます。〝利益が出たら社員に還元する〟をモットーに、定期的に社員旅行などを企画し、社員全員が満足できる会社づくりに努めています。「社員が喜んでくれれば仕事も頑張ってくれるのかな」と笑顔を見せ、今後も社員ファーストの会社を目指します。

 

 「人から助けられてばかりの人生。その分を社員に還元することが自分の役割。まずは100年まで歩いてゆきたい」。

 

 同友会には2005(平成17)年から入会し、21(令和3)年4月まで苫小牧支部幹事も務めました。「同友会はさまざまな人が集まり、良い勉強にもなる。また、そこでの出会いが自分自身の糧となるため、このつながりを大切にしていきたい」と話します。

 

 さとう・じゅんいち 1951年生まれ、苫小牧市出身。苫小牧工業高校建築科卒。69年に入社し、2019年から現職。

 エクセル=本社・苫小牧市。1930年創業、77年設立。屋根板金のほか外壁工事などを手掛ける。