景況感停滞続く北海道経済/2023年10-12月期景況調査
2024年02月15日
従業員不足、人件費増が深刻な経営課題
中小企業家同友会全国協議会(中同協)と北海道中小企業家同友会(北海道同友会)が四半期ごとに実施している景況調査結果(2023年10―12月期)がこのほどまとまりました。全国では2317社中863社が回答。北海道では638社中193社から回答を得ました。この結果について、北海学園大学経済学部の大貝健二教授(中小企業論)にコメントを頂きました。(DI値は特に断りのない限り前年同月比、▲はマイナス、①―④は四半期)
北海道同友会が実施した23年第4期(10―12月)景況調査では、業況判断DI(前年同期比)が▲7と、前回調査から4・6悪化した。同じく中同協が実施しているDOR景況調査でも6から0へ悪化したのに対して、日銀短観(全産業)では3改善し10から13へと推移しており、地域や規模といった調査対象企業の違いによって景況感が大きく異なっている(図1)。23年12月14日付の日本経済新聞では、価格転嫁の進展と原材料高の一服が採算を好転させ、企業業績を押し上げたと指摘しているが、北海道DORではそこまでの力強さが見えてこない。
景況感を判断する主要指標を見てみよう。確かに、採算(前年同期比)や採算の水準は改善を示したが、採算は▲11・9から▲4・9へと水面下での推移であり、その力は弱い。採算の水準は第1期調査で大きく悪化する傾向がある。そのため、次期(1―3月期)でどの程度の落ち込みを示すかが、今後の景況感を見るうえで重要になると考えられる(図2)。売上高は5・8の悪化(6・3から0・5)、業況水準は▲8・1から▲6・4へと水面下での推移、1・7改善にとどまる。次期見通しは改善見通しではあるが、改善見通し幅はいずれも5以内である。また、仕入単価DIは3の低下と原材料の高騰が落ち着いてきた感が見られる。ここで販売単価DIが上昇してくれば採算等の指標にも好影響が見られると考えられるが、実際には販売単価DIは4の低下であり、両指標のギャップが縮小しない(図3)。さらに、1人当たり売上高や付加価値は水面上での推移ではあるが、ともにやや悪化を示しており停滞感は否めない。
業種別にみると、業種ごとに改善と悪化が入り乱れており、判断が難しいところがある。製造業では採算は大きく改善したものの依然として水面下での推移であり、さらに業況判断、売上高の各DIは悪化を示すなど、原材料高を克服できていない状況がうかがえる。また、規模別にみると、従業員規模100人以上とそれ以外による景況感の相違がはっきりと見える。確かに100人以上規模でも今期は売上高、採算の水準、業況の水準など悪化している。しかし、それぞれのDI水準は他規模層と乖離している。小規模な企業ほど、コロナショックや原材料高など、経済環境の激変への対応に苦慮していると推察される。
経営上の問題点では「仕入単価の上昇」が53・4%と最も回答割合が高くなっているが、22年第2期をピークに6期連続で低下している。他方で、「従業員の不足」(46%)、「人件費の増加」(39・2%)が上昇を続けるとともに、両項目とも最高値を更新している(図4)。人手不足はコロナ禍で一度は落ち着いたものの、この1年でさらに深刻化しており、大企業においても人手不足問題を抱えていることから、人材の奪い合いともいえる状況が激化することは想像に難くない。人材の確保、育成とともに、生産性をいかに向上させるか、まさに難題に次ぐ難題をどのように克服していくのかが、問われている。
最後に、今期の特徴的な自由記述を紹介しよう。「官民問わず見積書に法定福利費を明示するようにした。働き方改革の影響から事業の適正価格の見直しを随時行い、発注者側の理解に努める」(建設業)、「付加価値のある商品造りをして少しでも単価UP。利益率の高い商品を作り販売する」(製造業)、「衣料品店ですが、衣料に限らずお客様が欲しいと思っている品を集めている」、「事務作業の合理化!人材確保が喫緊の課題!」(流通商業)、「管理職への経費意識を高める教育や、社員へのDX教育を実施し、業務効率化を図る試みを行っている」(サービス業)