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【1世紀企業 78】前田組(江差町)

2024年01月15日

創業当時のダンプカー

 

地域社会の発展支える歩み

「安全第一」徹底し未来へ

 

前田組は1923(大正12)年、江差町で建築業として創業し、昨年100周年を迎えました。古くから創業者の前田賢治氏の親族が船からの荷揚げを家業にしており、賢治氏がその流れをくみ看板を掲げました。町内の道路の整備を中心として、今も檜山管内の公共工事をメインに手掛けています。

 

 45(昭和20)年の終戦後、資材不足の影響は前田組にも及びましたが、山林を所有していたため木材の調達には困りませんでした。冬季は山から木を切り出して川沿いに降ろし、作業場で加工して工事に備えていました。

 

 戦後の混乱期を過ぎると他の資材も徐々に調達が可能になりました。56(昭和31)年に息子の健吉氏が2代目の社長に就くと受注先も広がり、江差町の役場庁舎や小中学校、公営住宅の建築を受注しました。さらに町内外の灯台の建設など、国の仕事も舞い込みます。高度成長期の地域社会の発展と重なるように、業績を伸ばしていきました。

 

 ところが、順調な歩みを災害による試練が襲います。港や橋の工事の最中に、台風で建築物が流されたことが何度もありました。補償制度がまだ整っていない時代で、甚大な損害を受けます。それでも、昼夜を問わない作業で完成にこぎつけ、地域の信頼を高めました。93(平成5)年の北海道南西沖地震では対岸の奥尻島が激震と大津波で被災。余震が続く中、奥尻島の発電所や青苗岬の灯台の復旧工事を着実に進め、復興の一翼を担いました。

 

 健吉氏の長男、憲男氏は75(昭和50)年頃に入社しました。現場の第一線で経験を重ね、2012(平成24)年、専務を経て3代目の社長に就任します。今では、橋やトンネルの補修、漁港の保全といった地域に欠かせないインフラ維持も多く手掛けています。

 

 創業から1世紀が経った現在も、死亡労災事故が発生していません。出発前や現場の安全確認はもちろん、一日の作業の終わりには、現場点検の時間を十分に確保することで重大な事故の発生を未然に防ぎ、「安全第一」を貫いてきました。関係機関から表彰を受けるなど、徹底した安全管理が評価されています。

 

 「安全管理と共に、地域への貢献を大切にしてきた」と憲男氏。地域のお祭りには、前田組のマークが入った袢纏(はんてん)を身に付けた社員達が参加してきました。バス待合所の設置やスポーツ少年団への寄贈など、地域密着の取り組みも進めています。

 

 憲男氏は「100年が経ち一度、初心に立ち返る。先人が残した実績を振り返りたい」と決意。江差町でも人口が急速に減少するなど、経営環境が変化し続けていることから、「初代、2代目の社長の歩みを大事にしながら、時代に沿って変えるべきところを変えていく。そして、一歩一歩進む」と、地道な企業づくりと地域の発展を見据えています。