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【レポート】北海道中小企業家同友会景況調査報告 (2023年4~6月期)

2023年07月25日

需要回復も採算とれず、景況感は大幅悪化

仕入額や人件費の増加が足かせ 先行きも不透明

 

文責:大貝 健二

(北海学園大学経済学部 教授)

 

 北海道中小企業家同友会が実施した2023 年第2 期(4-6月)景況調査では、業況判断DI(前年同期比)は前回調査から12.1ポイントもの大幅な悪化を示しマイナス0.5となった。同時期に行われている日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(短観)や中小企業家同友会全国協議会DOyukai Research(中同協DOR)と比較 をしてみると、短観では全産業で3ポイントの改善、北海道分調査においても1 ポイントではあるが改善、中同協DOR でも2ポイントの改善を示している。

 

 短観での景況感の改善に関しては、半導体不足などの供給制約が緩和し、自動車産業での生産が回復したこと、エネルギー価格の高騰が一息ついたこと、インバウ ンド観光客の増加が飲食・宿泊業の景況感を大きく押し上げたことが指摘されている(日本経済新聞 7 3日)。北海道 DOR のみが悪化を示した要因としては、景況感に地域差があること、調査対象企業の業種や規 模に差異があることが考えられる。次期見通し(先行き)については、ほぼ横ばいで推移する見通しとなっており、全国的な景況感の改善の一方で相変わらず先行きも不透明な状況が続きそうである。

 

 景況感を判断する主要指標を見てみると、今期はいずれも悪化を示した。売上高は17ポイント、採算は11.7ポイントといずれも大幅な悪化である。特に、採算が悪化した理由については、原材料費・商品仕入額の増加が70%と高止まりするなかで、人件費の増加や外注費の増加といった要因の回答割合が大きく高まっていることが注視される。また、採算の水準に関しては、例年の傾向では1期で大きく落ち込んで2期から改善する というサイクルが見られなくなっている。次期以降でどのような推移を示すのか、こちらも注視が必要だと考えている。

 

 続いて仕入単価DI と販売単価DI の推移を確認しておこう。20222期から80を上回って高止まりしてい た仕入単価 DI は、今期で 13ポイントの低下を示した。大きな負担となっていた仕入価格の高騰は、少しばかり安定してきたと考えられる。しかし、依然として DI70.5と高水準にあり、仕入価格の上昇分を販売 単価へ転嫁できているかが採算の改善には重要である。ところが、販売単価DI 6.3 ポイントの低下を示した。両指標のギャップは縮小しているものの、販売単価の上昇によるものではないことが気がかりである。次いで、1人当たりの売上高、付加価値に目を向けると、1 人当たり売上高は11.2 ポイントの大幅な悪化、1人当たり付加価値は4.8ポイントのやや悪化と、両指標とも悪化を示している。本調査での景況感の悪化は、これらの指標の悪化も伴っていることから、やはり次期以降の見通しもどちらかといえばネガティブなものに ならざるを得ないところである。

 

 そのほか、今期調査で気になった点を以下に挙げてみたい。第1に、採算の水準に関してである。前回の調 査報告でも指摘したが、規模別に見たときに、100人以上規模と100人未満規模の各層でのギャップが拡大している。規模間のギャップは元から存在していたが、コロナ禍以降にさらに拡大する動きを示しており、特に 小規模企業層で厳しい状況に陥っているのではないかと考えられる。第2に、人手の不足感の高止まりである。不足感が60%を上回りコロナ前水準に戻ったこと、なかでもサービス業で最も不足感が高まっていることなどが特徴である。

 

 コロナ後の需要回復に対して十分に対応できない、人手を確保するための人件費の増加が負担になるなど、需要回復による景況感の改善といった好循環に結び付いていない可能性が推察される。現代の中小企業問題の典型とも読み取れるが、この困難をいかに乗り越えるかが課題と言えるだろう。

 

 


≪景況調査について≫

・景況調査は、回答者の意識・マインドを基に景気動向を分析する調査です。

・特に、同友会が実施する景況調査は、経営者の意識を反映するものであるため、景気動向がはっきりと表れやすいと言われています。

・景況動向、および「次期見通し」を自社の経営指針等の見直し等に活用してください。

≪DI値について≫

・DI値は、「良い」と回答した割合(%)から「悪い」と回答した割合(%)を引いた数値です。

・「良い」と回答した企業が多ければ多いほどDIは高水準で推移するが、その逆もしかり。

・景況調査では、(1)DI値の水準(プラスかマイナスか、また水準はどの程度か)(2)前回調査からの好転幅、悪化幅の大きさを主に見ていきます。

・DI値の変化幅について

①1ポイント以内の場合:「ほぼ横ばい」と表現します。

②1~5ポイントの場合:「やや」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。

③10ポイント以上の場合:「大幅な」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。