採算水準推移の注視必至/2023年7-9月期景況調査
2023年11月17日
悪化する資金繰り、人手不足も深刻化
中小企業家同友会全国協議会と北海道中小企業家同友会が四半期ごとに実施している景況調査結果(2023年7―9月期)がこのほどまとまりました。全国では2163社中818社が回答。北海道では642社中175社から回答を得ました。この結果について、北海学園大学経済学部の大貝健二教授(中小企業論)にコメントを頂きました。(DI値は特に断りのない限り前年同月比、▲はマイナス、①―④は四半期)
北海道中小企業家同友会が実施した2023年第3期(7―9月)景況調査における業況判断DI(前年同期比)は、前回調査▲0・5からやや悪化し、▲2・3となった。同時期に実施されている「全国企業短期経済観測調査」(日銀短観)や中同協DORと比較してみると、日銀短観では2の改善(全国・全産業8↓10)であるのに対して、中同協DORでは、2・4のやや悪化である(図1)。
今期の景況感をどう見るか。日本経済新聞では、自動車生産が回復したことに加えて、コロナ禍から経済が再開したことによって、インバウンドの増加など幅広い業種で景況感の改善が続くと指摘している(日本経済新聞10月2日付)。他方で、ニッセイ基礎研究所では、中小企業の景況感は横ばい圏に留まり、大企業と中小企業で格差が際立つ結果になったことに加え、利上げに伴う欧米経済の悪化、原油高・円安進行による原材料価格の再上昇、物価上昇による消費の腰折れ、人手不足の深刻化など、不安要素が多くあることを指摘している(ニッセイ基礎研究所10月2日)。
北海道DORの動向について詳細を見てみると、主要指標である「売上高」、「採算」、「採算の水準」、「業況水準」の各DIは改善しているものの、いずれも5ポイント以内、かつマイナス水準での推移に留まっているものが多いため、その力は弱い。先行きは、採算や業況水準は改善見通しであるが、マイナス水準での推移が予想される。
気がかりなのは採算水準の推移である。通常は第1四半期で大きく悪化し、第4四半期まで改善をしていくという動きを示すが、コロナショック以降の改善幅が小さくなっている。次期にどこまで改善するか、そして次々期にはどう推移するか注視が必要である(図2)。
そのほか、今期調査で気になる指標を見てみたい。第1に、仕入単価DIは、半年前のように80を上回ることはないものの、70台と高止まりしている。他方で、販売単価DIは45・2と、両指標のギャップはそれ程埋まっていない。仕入単価の上昇分を販売価格へ十分に転嫁できているとはいえないだろう(図3)。
第2に、資金繰りの悪化である。全体で見れば、余裕感が30%を、順調割合も40%を上回っているので問題はなさそうに見える。しかし、「窮屈」割合が5%台とはいえ、コロナ前水準よりも1―2ポイント高く推移し始めている。業種別のDIでは、製造業でマイナス推移(窮屈)になっている。規模別では、100人以上の規模では改善しているが、100人未満の規模では軒並み悪化している。ゼロゼロ融資などのコロナ緊急融資の返済が始まっているが、借入時に想定していた経営状態がコロナ前水準まで回復していないため、資金繰りが苦しくなっている企業が増えてきているのではないかと思われる(図4)。
また、第3に人手不足が深刻の度を増している。本調査でも不足感は60%を上回り、かつ「不足」割合は20%に迫っている。コロナ前から比べると、1―2ポイント高い水準で推移しているし、今後も高まりそうな見通しである。
このように非常に厳しい局面を迎えている中で、10月11日に行われた分析会議では中小企業のM&Aが進んでいるということが話題になった。人手不足に加えて事業承継が進まないことから、黒字のうちに企業を売却する動きに転じているのではないかと考えられる。2015年あたりから「大廃業時代の到来」と言われていたが、同様にM&Aも進んでいる。こうした動きが地域経済に、さらには同友会活動にどのような影響をもたらすかも注視していく必要があろう。
同友会11月号3面景況調査・図1~5-01