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【わが人生わが経営 148】(株)エスピー工研 代表取締役会長 三箇 將夫氏(80)(札幌支部)

2023年11月17日

 

定着率の良さを継承

設計製造販売にこだわり

 

「小さいながらも、設計をし、製品をつくり、営業販売をしてきた。三拍子揃ったものづくりメーカーとして誇りに思っている」

 

 三箇さんは1943(昭和18)年、札幌市で3人兄弟の三男として生まれました。高校時代はバレーボールに打ち込み、卒業後は専修大学へと進学。しかし、63(昭和38)年3月、父由夫氏が亡くなり、大学を中退。由夫氏が経営していた平田農機具製作所へ入社します。平田農機具製作所は、由夫氏と義兄平田一夫氏の勤務していた会社を2人が買い取り、平田鉄工所として立ち上げたのが始まりです。その後、戦争下となり、個人事業者の鉄材購入が難しくなったため、事業者9名が出資し、40(昭和15)年に平田農機具製作所を設立したといいます。

 

 入社から3年半ほど、製造部門で働いていた三箇さん。主にビル建設の鉄骨に使われる部材鋼板の切断加工を担っていました。「製造部門はとにかく忙しかった。納入先が必要とする数量を製造し終えるまで帰ることは出来なかった。土日もほぼ休まず働いた」と振り返ります。

 

 67(昭和42)年には、営業部門へ異動となり、全道各地の金物店や農協を回りました。「この時代は道路も整備されておらず、ほとんどが列車での移動だった」と懐かしみます。

 

 73(昭和48)年の第一次石油危機、78(昭和53)年の第二次石油危機の影響や、農業の近代化により、自社ブランドの農工具の売れ行きが悪くなりました。そんな中、工場より発生する騒音、振動が、地域住民から公害問題とされ、工業団地への移転を決めます。78(昭和53)年に札幌市東区から現在地(同市西区発寒)へ全面移転。そして、79(昭和54)年に36歳で6代目代表取締役社長に就任しました。三箇さんは、国や道の公共事業予算が右肩上がりになっていることに着目し、80(昭和55)年に営業方針を変更。公共事業を中心とした新規取引先の開拓に舵を切り直しました。「社長就任後は、会社移転費用と退職金の支払いが重なり、大変な思いをした」と苦労を語ります。

 

 90(平成2)年には創立50周年を迎え、91(平成3)年に社名をエスピー工研に変更。Service(サービス)のS(エス)、Partner(パートナー)のP(ピー)、たくみの工、研究の研とし、「将来の展望を考えて、固有名称を廃止し、現代的かつ親しみやすさを重視した」といいます。「自社製品が少なくなる中、今後はオーダーを受け、パートナーが求める製品もつくっていきたいという思いが強かった」

 

 2001(平成13)年には地蒔きホタテ漁業器材(八尺)の製造などをスタートさせます。収穫する際に割れてしまう貝の量を減らすため八尺の改良に奮闘。三箇さん自身も現場を訪れ、漁師の船に乗り、漁の様子を見学し、八尺の設計にいかしたといいます。「地域によって海底の条件が異なるので、地域ごとに調整が必要だった。試行錯誤の結果、改良前は56%だった貝の割れが、3%にまで減った」と誇らしげに語ります。

 

 18(平成30)年、明河正幸氏に社長の座を譲り、三箇さんは会長に就任しました。

 

 20(令和2)年に創立80周年(創業85周年)を迎えた、エスピー工研。同社では、創立当時から人力でのものづくりが最重要視されていたといいます。「定年は60歳。父も職人だった。職人は自分の屋号印を持ち、それを自分が作った製品に刻印していた」。こうした、人を大事にする考え方により、職人の定着率も高かったそうです。「定着率の良さは現在も引き継がれている。これからも綿々と続いていくと思う」と微笑みます。

 

 「自社製品を設計し製造し販売する。これはものづくりメーカーとして誇れること。自社の強みを維持し続けるために、他社との違いは何かを見極め、それを踏まえて時代の流れにどう対応していくかが重要」と語り、「自分が元気である限り、ノウハウを次の世代へと伝えていきたい」と未来を見据えます。

 

 同友会には1974(昭和49)年に入会しました。「前社長の佐々木登久夫氏が入会していたので、引き継ぐ形で同友会活動に参加した」と語る三箇さん。2000(平成12)年から11(平成23)年には、西・手稲地区会幹事を務めたほか、未知の会やHoPEの活動にも取り組みました。「例会などに参加する会員は皆熱心な印象。未知の会では自分の会社の悩み事を打ち明け、アドバイスをもらったりした」と振り返ります。

エスピー工研=本社・札幌市。1935年創業、40年創立。小物鍛造品・火造加工のほか、景観やデザイン、モニュメント等の製作を手掛ける。従業員数24名。