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これからの中小企業経営と金融~地域金融機関と良い関係を作るには~/日下企業経営相談所 代表 日下 智晴 氏

2023年10月15日

 ◆金融検査マニュアル

 19997月に金融検査マニュアルが制定されて以降、金融は大変困難な時代となりました。当時はバブル経済が崩壊し、それまでの金融機関の不良債権処理が、未だ手付かずでした。金融庁の発足と同時に金融検査マニュアルの運用が開始され、金融機関に対して厳しい金融検査が行われるようになりました。

 

 金融検査マニュアルが中小企業に不利益だった理由は、融資の査定にあたり企業の財務内容しか考慮されなかったからです。財務内容の良し悪しで債務者区分を決め、担保の有無で引当額を決めていました。そして、金融機関に企業の定性情報を重視しない仕組みを植え付け、優れた技術、人的資本などを考慮できない仕組みが導入されたのです。

 

 ◆リレーションシップバンキング

 金融庁は2003年から、地域金融機関に対してリレーションシップバンキングを義務付けました。信用金庫、信用組合のやり方を地域のトップバンクにも求めました。その結果、銀行も協同組織が対応していた中小・零細企業への融資を進めた一方、年商5070億円規模の企業には地銀が対応できず、深刻な空白地帯が生じてしまいました。国が政策的に中小企業の不良債権問題へ対処しようとした際に、地銀のポジションを無理矢理下げたのです。これは非常に大きな問題でした。

 

 その後14年に、金融庁は金融機関に対して「取引先の事業性をしっかり評価し、取引先との間で共通価値を創造していきましょう」と、本来のリレーションシップバンキングへ方向転換しました。

 

 ◆経営者保証改革プログラム

 今年4月から経営者保証改革プログラムの運用が始まりました。安易な個人保証に依存した融資を抑制するため、金融機関が個人保証を徴求する際に手続きを厳格化することで、経営者保証の必要性を説明し、その結果を記録することが求められるのです。これに対して金融機関がどのように対応していくか。企業が金融機関との関係を根本的に見直すきっかけになるのではないか、と思っています。

 

 ◆会計人の役割

 企業には、バランスシートには表れない知的資産が多く存在し、これらの知的資産が将来のキャッシュフローを生み出します。企業と一緒に伴走する会計人が、現在のバランスシートの分析と将来の計画づくりを支援し、それをもとに金融機関も貸し出しやサポートを行います。

 

 そして、その流れを一層確実にするのが、事業成長担保権です。信託会社が事業全体を管理し、それに対して金融機関が担保権を取得し、融資を行うという仕組みです。まだ法律は制定されていませんが、新たな担保権の創設に向けて金融庁は動いています。

 

 15年から、金融行政が変革の時代に入りました。これを期に、金融機関と税理士などの会計人が手を携えて企業を支援していくという流れができれば、今の金融行政に求められている姿、すなわち共通価値の創造がより実現しやすくなると考えています。

831日、オホーツク支部8月例会)

 

くさか・ともはる=1961年生まれ、84年神戸大学経営学部卒、広島銀行入行。2015年11月に金融庁に転職。金融仲介機能の改善や地域金融の改革に取り組み、21年金融庁を定年退職。同年10月より現職。