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【1世紀企業 76】池上商店(小樽市)

2023年09月15日

1960年頃初代と二代目が新築した店舗

 

地域からの信頼を第一に

時代に合わせて技術を磨く

 

池上晃平相談役

 1923(大正12)年に小樽市で創業した池上商店は、金物店に始まり、業容を広げ今年9月に100周年を迎えました。

 

 創業者の池上相之助氏は1915(大正4)年に福井県より単身で小樽に移住し、日本通運に入社。結婚後、妻の家である瀬戸物屋の両隣の店舗を買い取り、金物需要の高まりに着目して、池上商店を設立しました。

 

 その後、仕入れ先に勤めていた三谷昶氏の働きぶりに目を留めて、婿養子に迎えます。三谷氏は1960(昭和35)年に、二代目として事業を引き継ぎました。

 

 当時の小樽は、商品を仕入れてもすぐに売れてしまう程の好景気でした。納品まで1ヵ月もかかり常に品薄状態だったため、複数の倉庫を建設し商品の保管を強化。倉庫業のようでもありました。

 

 事務所のある奥沢町は水資源が豊富で、酒蔵やゴム製品の製造工場があり、金型製造や鉄工所、家庭での内職等多様な職種が広がっていました。社宅や戸建てが増え、建設会社や業者も増加。それに伴い同社の物販も拡大し、1955(昭和30)年には株式会社に改組しました。

 

 現相談役の池上晃平氏は修行でキムラに入社。2年後に退職し、池上商店に入社します。

 

 当時、都市ガスの普及に伴い、LPガスとの競争が激化。都市ガスは、これまでの鋳物の一口コンロから、より高機能なガス炊飯器、瞬間湯沸器、二口コンロ等の製品を、ガス配管工事と共に展開していき、市場でのシェアを広げていきました。都市ガス対応製品の販売は、同社を含む15社の地元販売業者に委託されていましたが、供給の拡大に伴い他でも扱われ、販売業者の取り扱いは減少していきました。

 

 晃平氏は、大手企業に依存した物販に限界を感じて工事業に特化することを決め、必要な免許を取得します。市の水道工事や、ガス、排水管工事、官公庁や団地の工事を受注するようになり、52才で三代目社長に就任しました。また、特殊業だった鍵の解錠業に小樽で初めて取り組んだのもこの頃です。

 

 1995(平成7)年頃には、スーパーデポ、ハウスメーカーが台頭し、地場建設業の真価が問われました。晃平氏は、家庭用ボイラーや燃焼器具の修理技術者減少への危機感を覚えて、大工の棟梁を雇い、リフォームや配管工事への対応を強化しました。

 

 晃平氏の長男である匠氏は、2019(令和元)年に48才で四代目に就任しました。事務所のIT化や、来店が難しい高齢者を支え、エアコン等の設備工事や家庭電化製品の配達・設置などへの参入も目指しています。

 

 晃平氏は「大手企業との差別化は、修理や施工のスピードにある。ユーザーの困りごとにすぐに解決できる体制をつくることが重要。物販だけではなく、職人を育て、確かな技術の提供で地域に貢献したい」と語ります。