011-702-3411

営業時間:月~金 9:00~18:00

同友会は、中小企業の繁栄と、そこで働く全ての人の幸せを願い、地域社会の発展のために活動しています。

需要回復も景況感大幅悪化/2023年4―6月期調査

2023年08月15日

仕入額・人件費増が障害、先行き不透明

 

 中小企業家同友会全国協議会と北海道中小企業家同友会が四半期ごとに実施している景況調査結果(20234―6月期)がこのほどまとまりました。全国では2163社中805社が回答。北海道では642社中189社から回答を得ました。この結果について、北海学園大学経済学部の大貝健二教授(中小企業論)にコメントを頂きました。(DI値は特に断りのない限り前年同月比、はマイナス、①―④は四半期。詳細は同友会ホームページに掲載)

 

 北海道中小企業家同友会が実施した23年第2期(4―6月)景況調査では、業況判断DI(前年同期比)は前回調査から121㌽もの大幅な悪化を示し▲05となった。同時期に行われている日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(短観)や中小企業家同友会全国協議会Doyukai Research(中同協DOR)と比較してみると、短観では全産業で3㌽の改善、北海道分調査においても1㌽ではあるが改善、中同協DORでも2㌽の改善を示している(図1)。

 

 

 短観での景況感の改善に関しては、①半導体不足などの供給制約が緩和し、自動車産業での生産が回復したこと、②エネルギー価格の高騰が一息ついたこと、③インバウンド観光客の増加が飲食・宿泊業の景況感を大きく押し上げたことが指摘されている(日本経済新聞73日付)。北海道DORの景況感のみが悪化を示した要因としては、景況感に地域差があることや、調査対象企業の業種・規模に差異があることが考えられる。次期見通し(先行き)については、ほぼ横ばいで推移する見通しとなっており、全国的な景況感の改善の一方で、相変わらず先行きも不透明な状況が続きそうである。

 

 景況感を判断する主要指標を見てみると、今期はいずれも悪化を示した。売上高は17㌽、採算は117㌽といずれも大幅な悪化である。特に、採算が悪化した理由については、原材料費・商品仕入額の増加が70%と高止まりする中で、人件費の増加や外注費の増加といった要因の回答割合が大きく高まっていることが注視される。しかし、双方ともに次期見通しは、売上高が77㌽、採算は81㌽の改善となっており、どのような動きを見せるのか、注視が必要だと考えている(図2)。

 

 

 続いて仕入単価DIと販売単価DIの推移を確認しておこう。222期から80を上回って高止まりしていた仕入単価DIは、今期で13㌽の低下を示した。大きな負担となっていた仕入価格の高騰は、少しばかり安定してきたと考えられる。しかし、依然としてDIは705と高水準にあり、仕入価格の上昇分を販売単価へ転嫁できているかが採算の改善には重要である。ところが、販売単価DIは63㌽の低下を示した。両指標のギャップは縮小しているものの、販売単価の上昇によるものではないことが気がかりである(図3)。

 

 

 次いで、1人当たりの売上高、付加価値に目を向けると、1人当たり売上高は112㌽の大幅な悪化、1人当たり付加価値は48㌽のやや悪化と、両指標とも悪化を示している。本調査での景況感の悪化は、これらの指標の悪化も伴っていることから、やはり次期以降の見通しもどちらかといえばネガティブなものにならざるを得ないところである(図4)。

 

 

 そのほか、今期調査で気になった点を以下に挙げてみたい。第1に、採算の水準に関してである。前回の調査報告でも指摘したが、規模別に見たときに、100人以上規模と100人未満規模の各層でのギャップが拡大している。規模間のギャップは元から存在していたが、コロナ禍以降にさらに拡大する動きを示しており、特に小規模企業層で厳しい状況に陥っているのではないかと考えられる。第2に、人手の不足感の高止まりである。不足感が60%を上回りコロナ前水準に戻ったこと、なかでもサービス業で最も不足感が高まっていることなどが特徴である。コロナ後の需要回復に対して十分に対応できない、人手を確保するための人件費の増加が負担になるなど、需要回復による景況感の改善といった好循環に結び付いていない可能性が推察される。現代の中小企業問題の典型とも読み取れるが、この困難をいかに乗り越えるかが課題と言えるだろう。