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【1世紀企業 75】赤帽子(札幌市)

2023年08月15日

 

時代とともに街並み彩る

看板一筋で五代目に

 

 赤帽子は1892(明治25)年に札幌市で看板店として創業し、2022(令和4)年に130周年を迎えました。

 

 創業者の原田文治郎氏は江戸で生まれ育ち、看板店に勤めていました。紆余曲折を経て92年に札幌に渡り、中央区南1条西4丁目に、北海道で最初の看板店『赤帽子』を創業。店名は文治郎氏が常に赤い帽子をかぶっていたことに由来しています。

 

 文治郎氏は情熱的な音楽愛好家でもあり、当時札幌で高い人気を集めた「赤帽子音楽隊」を創設し、洋楽の普及にも貢献したといいます。

 

 09(明治42)年には二代目社長に大耶幔氏(だいやまん・文治郎氏長男)が就任。大耶幔氏には絵の才能があり、看板のイラスト描きを得意としていましたが、18(大正7)年の北海道博覧会への参加をきっかけに絵描きとしての人生を夢見て、会社を辞めることを決意しました。

 

 社長退任と業績悪化が重なり、存続の危機に直面していた頃、30(昭和5)年に新聞店に勤めていた貫一氏(文治郎氏五男)が戻り三代目社長に就任しました。貫一氏は品質に一切の妥協をしない性格で、納得のいかない看板はまさかりで壊して作り直したほどです。そんな徹底した仕事ぶりが評価され、業績は回復。見事経営を立て直し、71(昭和46)年に法人化しました。73(昭和48)年には社屋、工場を一新し、さらなる発展を目指しました。

 

 81(昭和56)年、貫一氏の逝去に伴い、四代目社長に和夫氏(貫一氏長男、現会長)が就任。父親譲りの性格で、品質にこだわり続けました。時代と共に看板の素材や作りが大きく変わっていく中で、世の中の流れを敏感に察知し、設備の近代化や大型化にもいち早く取り組みました。その結果、大型商業施設の仕事に対応できるようになり、順調に業績を伸ばしていきました。

 

 92(平成4)年には創業100周年を迎え、次なる成長を願い、現在の白石区米里33丁目61号に本社・工場を移転・新築し、施設を拡張しました。

 

 そして、今年5月、下出吉晴氏が五代目社長に就任しました。同社の130年の歴史で、初の親族外承継です。下出氏は94(平成6)年に中途入社。前職の企業が倒産した際、その企業の看板製造を請け負っていた赤帽子に乞われて入社し、約30年間勤めてきました。

 

 下出氏は、承継を控えた今年3月に同友会に入会。会員でもある社外監査役から「異業種の経営者とのつながりづくりと、経営の勉強の場」として入会を勧められたことがきっかけでした。

 

 早速、経営の本質を学ぼうと、経営指針研究会にも参加。下出社長は「130年の歴史から学ぶところは学び、変えるべきところは変えていきたい」といいます。現在従業員は、初代文治郎氏のトレードマークであった「赤帽子」をイメージした「赤いヘルメット」を被り、仕事に取り掛かかっています。「看板づくりを通した美しい街並み、社員の豊かな生活を実現したい」と、街づくりへの貢献と更なる企業発展を目指しています。