【わが人生わが経営 145】須藤建設（株）　相談役　須藤　芳巳氏（74）（西胆振支部）

2023年08月15日

住宅部門再建に尽力

空き家対策で地元再生へ

　「創業200年に向けて、関東の風を感じることが大事。新しい情報を常に取り入れ、会社存続のためにリスクを分散させる必要がある」

　須藤さんは1949（昭和24）年、豊浦町で3人兄弟の次男として生まれました。宮大工の祖父、幸次郎氏が17（大正6）年、山形県から北海道に入植。18（大正7）年には豊浦神社を棟梁として創建し、須藤建設の前身となる須藤組を創業しました。「祖父の弟子の大工さんが家を出入りし、常に木材が近くにあり端材や道具でよく遊んでいた」と幼少期を振り返ります。

　室蘭工業高校建築科（1期生）へと進み、建築の基礎を学びます。「クラスのほとんどが高校卒業後すぐに就職する時代だった。しかし、1つ上の兄（敏幸氏）が大学に進学したので、自分も大学に行きたいという気持ちが芽生えた」といい、東北工業大学建築工学科に進学しました。

　大学卒業後は菱中興業（現在の菱中建設）に就職します。大規模ビル新築現場の所長を担うなど、7年間在籍し、この間に一級建築士試験にも合格。「7年間で技術者として自信がついた」といいます。

　78（昭和53）年に退社し、須藤建設に入社します。「当時の須藤建設に、実務者として一級建築士の資格を持っている人はいなかった。そんな中私が入社したことで、他の社員達の心境にも変化が生まれ、合格者が増えた」と微笑みます。

　須藤さんも技術者としてキャリアを積むつもりでしたが、3代目である兄敏幸氏から「伊達支店長として営業を頼む」と言われ、営業マンとして日々奮闘することとなります。

　2代目の父幸一氏は、須藤建設のゼネコン部門の拡張に力を注いでいたため、木造住宅部門は縮小していました。「当時は木造住宅の寒冷地仕様という概念がなく、冬季の結露やスガモレは当たり前の内地仕様の住宅ばかり。父は北海道に木造は適さない、欠陥住宅を売るわけにはいかないと、木造住宅を建てることを封印した」といいます。

　しかし、85（昭和60）年、須藤さんは「祖父の弟子である大工の技術を活かしたい、設計の仕事をしたい」との思いから、住宅事業部としてＳＵＤＯホームを立ち上げます。同年、自分が長年研究してきたＲＣ造と外断熱のノウハウを活かし、室蘭工業大学鎌田紀彦助教授（当時、現名誉教授）の鎌田建築生産工学研究室との共同開発で「ＲＣ　外断熱工法　伊達の家」を建設します。そして、鎌田氏、伊藤創作工房とのコラボレーションにより市場性のある木造高断熱高気密住宅の開発と営業に着手。86（昭和61）年5棟、87（昭和62）年13棟の実績を上げました。

　「公共事業と異なり、住宅は設計者、施工者が仕様を決められる。技術さえあれば関東に進出しても勝てると思った」と語り、88（昭和63）年に関東進出。順調に事業を展開し、現在は土気オフィス（千葉市）と流山オフィス（千葉県流山市）の2拠点体制をとっています。

　さらに、2005（平成17）年からはニセココンドミニアム事業を始め、18（平成30）年に創業100周年記念事業としてニセコ支店・ニセコオフィスを新たに設けました。

　社外活動では、19（令和元）年にスドウヨシミ一級建築士事務所を開設。「18（平成30）年に須藤建設では相談役となり世代交代したため、〝自分は自分〟という新たな土俵が欲しくなり事務所を開いた」といいます。

　20（令和2）年には、住環境に関する相談を受け、不動産価値を高める活動を行う「ＮＰＯ法人住まいの相談西いぶり」を立ち上げました。弁護士や土地家屋調査士、宅地建物取引士、司法書士など各分野に精通した専門家とプラットフォームを構築し、人口減少とともに社会問題化する空き家対策などに取り組んでいます。「所有者不明のまま危険家屋となり、税金で解体すれば将来世代への負債になるが、活用できれば資産になる。これまでの経験やノウハウを活かして、新たな価値を付加することで、生まれ育ったまちの再生に繋げたい」と語ります。

　同友会には1983（昭和58）年に入会。2001（平成13）年から03（平成15）年まで西胆振支部第5代支部長を務めました。「まずは会員の会社を深く知ることが大事だと思った」といい、支部長時代には持ち回りで会員企業を回る移動例会を企画しました。「同友会の場は、本音で話せる異業種交流として大事にしていた。集まりがある度に室蘭まで鈍行列車で通った」と懐かしみます。