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【わが人生わが経営 144】柳原工業(株) 代表取締役 柳原 正司氏(71)(道北あさひかわ支部)

2023年07月15日

 

 

自分の頭で考え行動

会員訪問で学ぶ経営辞書

 

「同友会のメンバーは人任せにせず、自ら調査や研究に携わる人ばかり。知り合い、学び合い、結果として援け合う精神です。どんな会社も同友会という辞書の1ページとなれるのです」。

 

 こう話すのは旭川市内で上下水道工事を手掛ける柳原工業の柳原正司社長。長年にわたって積極的な企業訪問を行ってきた、道北あさひかわ支部の「生き字引」でもあります。

 

 柳原さんは1952(昭和27)年、北見市で飲食店を営む両親の元に生まれました。しかし、火災に巻き込まれて店を失うなど苦難が相次ぎ、幼い頃に旭川市に転居。父親が雑品店やスクラップ回収の仕事を始めたのが会社の前身です。「生活はとても苦しかったです」と当時を振り返ります。

 

 旭川北高卒業後、東海大に進学し土木工学を学びます。部活動で空手に打ち込む毎日でしたが、3年生からは湘南のキャンパスで学び始めました。好景気に合わせてファストフードが流行し始めた時代です。卒業後には東京で百貨店や商社などで食品開発の仕事に就きます。現在も続く「ステラおばさんのクッキー」の企画やアイスケーキで有名なシャトレーゼでスタートアップに関わりました。

 

 10年の会社員生活の傍らで病気をし、旭川に戻ったのが84(昭和59)年のこと。当時の旭川市は下水道事業が始まり、建設工事の需要が高まっていました。柳原工業の営業部長として上下水道管の布設や住宅の水洗化工事の受注に熱意を傾けたといいます。

 

 社長に就任した97(平成9)年に、前社長の父が加入していた同友会の活動も始めました。「最初の例会の印象は強烈でした」。社員が辞めてしまうかもしれないという赤裸々な不安を打ち明ける発表者、時に厳しい意見を投げかける旭川北地区会メンバーに衝撃を受けます。

 

 翌年発表者として壇上に立った際には「先輩たちからガンガンに突っ込まれました」。しかし柳原さんはへこたれません。「ここまで腹を割った話ができるとは思っていませんでした。今度は自分が仲間の話を聞く番だと、どんどんのめり込んでいきました」

 

 組織委員会のメンバーとなってからは、100社近くあった旭川北地区会の会員企業訪問を企画します。「同友会だと言えば、どんな経営者も仕事の手を止めて話をしてくれます。ほとんどただで勉強をさせてくれるようなものでした」と振り返ります。

 

 会員から聞く話は全て興味深いものばかり。道路拡幅の立ち退きで店をたたもうとする寿司屋さんに、地元のお客さんに報いてほしいと廃業を思いとどまらせた会員もいて、「熱意に思わず涙しました」と語ります。事業転換を遂げた会員からも、経営者自ら学び、人任せにしない姿勢に感銘を受けました。

 

 企業訪問が苦手な仲間に向け質問項目をまとめた冊子も作るなど、誰でも訪問出来るよう環境も整備。経営指針作成でも第一期生として勉強会に励み、青森同友会とも交流しました。「熱い思いをぶつけ合って、互いに経営指針を磨いていきました」と振り返ります。

 

 組織委員長や副幹事長、地区会長も歴任しました。「役職は偉さではありません。担当係です。自分の役割は何かと自ら考えて初めて意味があります」。おごらず自分の頭で考え、行動することの大切さを説きます。とはいえ、万事が順調とはいきません。社長に就任してからはバブルの崩壊や公共工事の削減など、不景気の波に見舞われます。経営立て直しに向け、一時は同友会の活動も休止せざるを得ませんでした。

 

 現在は老朽化した水道管の更新や耐震化といったインフラの長寿命化に軸足を置き、売り上げも堅調。地場企業としての地域貢献にも力を注いでいます。知的障がいを持つ妹がいることから自社でも障がい者雇用をし、就職支援をする旭川市職親会にも加入しています。

 

 2015(平成27)年まで20年にわたって開かれた音楽イベント「ジャズマンス・イン・旭川」の委員や、地域のお祭りなどさまざまなイベントで陰ひなたなく汗を流してきました。「水道は地域の方のお金で出来たもの。地域に恩返しをしたいのです」と言います。

 

 15(平成27)年からは同友会に復帰しました。「まるで〝浦島太郎〟の気分で、世話人として陰ながら支えさせてもらっています。メールなど便利な世の中になりましたが、若い方にもぜひ会員訪問してもらいたいですね」と笑います。

 

 やなぎはら・しょうじ 1952年生まれ、北見市出身。84年に入社し、97年から現職。

柳原工業=本社・旭川市。1959年に個人工事店として創業。水道本管布設や一般給排水工事のほか、下水道関連の土木工事も手掛ける。