景況感改善も先行き見通せず/2023年1―3月期調査
2023年05月15日
景況感改善も先行き見通せず
環境変化への対応、小規模会社ほど困難に
中小企業家同友会全国協議会と北海道中小企業家同友会が四半期ごとに実施している景況調査結果(2023年1―3月期)がこのほどまとまりました。全国では調査対象2163社中754社が回答。北海道では642社中188社から回答を得ました。この結果について、北海学園大学経済学部の大貝健二教授(中小企業論)にコメントを頂きました。(DI値は特に断りのない限り前年同月比、①―④は四半期)
北海道中小企業家同友会が実施した23年第1期(1―3月)景況調査では、業況判断DI(前年同期比)は前回調査から14・1ポイントもの大幅な改善を示し11・5となった。同様に業況判断DIで改善を示したのは、「全国企業短期経済観測調査」(短観)の北海道調査のみであり、短観や中小企業家同友会全国協議会DOyukai Research(中同協DOR)では悪化を示しており、景況感の地域差が反映されているものと考えている。
また、全国の景況感について、日本経済新聞(23年4月3日付)では、製造業の5期連続の悪化要因として、「資源価格やエネルギー価格の高騰が景況感を下押しする構図」である一方で、対個人サービスに関しては「新型コロナの感染対策の緩和で、人の流れが回復していることが、景況感を押し上げた」とみている。中同協DOR(速報)では、23年は「足踏み経済」であり、「世界的な金融不安が先行きに影を落としている」と捉えている。本調査においても、先行き感は3期連続でほぼ全ての指標で悪化見通しとなっており、前年の同時期と比較して景況感は改善しているものの、先が見通せない状況が続いているとみてよいだろう(図1)。
景況感を判断する主要指標を見てみると、今期は、売上高、採算、業況判断の前年同期比DIで改善を示した一方で、採算の水準、業況水準の各DIは、「やや悪化」となった。前回調査までは、売上高DIは改善を示しても採算DIが悪化していたことを踏まえると、先行きが見えない状況であるとはいえ、環境の変化に対応できつつあるのではないだろうか(図2)。
仕入単価と販売単価それぞれのDI(前年同期比)の推移を見ても、仕入単価DIは80台で依然として高止まりしているのに対して、販売単価DIも少しずつではあるが上昇を続けている。両指標のギャップは依然として30以上あるものの、22年1期調査から15縮小している。仕入価格の上昇分を販売価格へ転嫁することが一定程度可能になっているととらえられるのではないだろうか(図3)。
とはいえ、今期調査では今後注視が必要な動きもいくつか確認できた。第1に、採算の水準DIの推移に関してである。北海道DORにおいて、採算の水準は第4期から第1期にかけて大きく悪化する動きを示してきたが、今期はその傾向が該当しない。次期調査において、同DIがいかに推移するかを改めて注視したい。第2に、同じく採算の水準に関して、正規従業員数規模別にみると、動向の差異が明確に現れており、20人未満規模の採算水準の悪化が目立っている。全体的には価格転嫁など環境の変化に対応できつつあるのではないかと指摘したが、規模が小さいほど困難があると考えられる。
第3に、主要指標を地域別に見たときに、今期は道南地域(日胆、函館)がいずれも大幅な悪化を示していることである。悪化幅が大きいことについては、そもそも道南地域企業の回答数が25社と少ないためではある。しかし、今期の動向は、他地域とは真逆であり、道南地域の経済状況について掘り下げる必要があるように思われる。
第4に、景況感とは別の論点になるが、回答企業数が3期連続で減少していることがある。景況調査の回答数の増減に関して、急激に景況感が悪化した際に回答したくないことから回答数が減る、あるいは景況感の改善により忙しくなることから回答数が減ると言われている。景況調査の目的は、良い経営環境を創り出すための政策的根拠であるのみならず、経営者自身が自社の経営状況を把握できているか、自社を取り巻く外部環境の変化を確認できているかを問うものでもある。回答数が増えることを願ってやまない。