011-702-3411

営業時間:月~金 9:00~18:00

同友会は、中小企業の繁栄と、そこで働く全ての人の幸せを願い、地域社会の発展のために活動しています。

淘汰の時代の小さくて強い農業とは? /久松農園代表 久松達央氏

2023年04月15日

 ◆農業を始めたきっかけ

 農業を仕事にしようと思ったことはありませんでしたが、大学を出て一般企業に就職後、20代半ばで農業に関心を持ちました。28歳の時会社を辞め、茨城県の農業法人で1年間勉強し、久松農園をスタートさせました。

 

 ◆コンセプトはお裾分け

 「自分の食べたいものをお裾分け」がコンセプト。水上勉の「土を喰う日々―わが精進十二ヶ月―」を読んで、農業って良いなと思いました。自分が食べたいものをまず作る。そしてその余剰分をお客様にお届けしたい。今は余剰分の方がはるかに多いですが、基本的にはそれを実現したいと考えています。

 

 なぜ今のスタイルか。生鮮野菜の味を決めるのは3つの要素だと思います。1つ目は栽培の時期、旬であるかどうか。2つ目は鮮度、収穫してからの時間の短さ。特に香りが時間の経過とともに激しく劣化します。3つ目は品種、栽培でその植物体の遺伝的特質を変えることはできません。適した時期に自分の作りたい品種を育てて、それを鮮度良くお客様に届けることが目的にかなうと思い、直販スタイルをとっています。

 

 ◆テクノロジーと資本

 自動運転のシステムが実用化されてきています。これにより農業モジュールの導入が進んでいくでしょう。私は農業のモジュール化を提唱していますが、これによって何が一番変わるか、それは人材育成です。モジュール化で匠の技を覚える必要がなくなってしまうからです。モジュール化が可能な生産現場においては、判断をするマネージャーと非熟練労働に労働を切り分けてマネジメントすることが可能になります。マクドナルドみたいな経営が原理的には可能になるのです。

 

 ◆日本の弱さ

 日本に足りないのは「集積」です。他国のように1つの場所で農作物を生産すると、苗を作る会社、苗を植えるだけの会社、破れたビニールハウスを直す会社など周辺ビジネスがたくさん生まれます。そうすると個々の経営体は元手が少なくてすみます。しかし、これが日本にはありません。日本の弱さを象徴していると私は思います。

 

 ◆人が育つ3条件

 農業の現場で人が育つには、回っている現場があること、手本となる人が近くにいること、習熟の時間が十分にあることが必要だと思います。本人の資質はどこにも入っていません。零細企業ばかりの農業の業界に最もいない人材はミドルマネージャーです。いかにマネージャーを育てるかが大事になってきます。

 

 ◆最愛戦略

 農業のモジュール化によって、スケールメリットの効く分野は集約化が進んでいくと思われます。そのため、集約型と小農に二極化していくでしょう。生き残る方法は3つあります。最高、最安、最愛です。農業も大淘汰時代に入り、最高なもの、最安のものの勝者はそれぞれ1つしかありません。ですが、愛されているものはたくさんあります。すべての小農は最愛戦略を進めるべきです。技術が進化するほどモノの良し悪しではなく、好き嫌いが問われると私は思います。小さい農家こそ、好き嫌いに戦略を振るしかないのではないでしょうか。

 (127日、札幌支部農業経営部会1月例会)

 

ひさまつ・たつお=28歳で脱サラし、茨城県土浦市で有機野菜づくりを始める。昨年「農家はもっと減っていい」(光文社新書)を出版し話題を呼ぶ。