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【1世紀企業 74】田畑建設(江差町)

2023年04月15日

1926(大正15)年熊石村・薬師寺本堂上棟祭式

企業は地域とともに

感謝の気持ちは忘れない

 

田畑昌伸社長

 田畑建設は1921年に現在の爾志郡乙部町で建築業として創業し、昨年100周年を迎えました。創業者の田畑徹太郎氏が20歳の時です。息子の榮一氏は終戦後シベリア抑留から帰還。47年に専務として入社しますが、2年後に徹太郎氏が急逝します。第二次世界大戦後の49年に田畑組として法人化し、本社を江差町へ移転。50年代には東京にも進出するなど、北海道で5本の指に入る建設業に成長しました。

 

 66年に田畑組から分離して現在の田畑建設を設立。本社を札幌市に置きました。設立当初は資金が乏しかったものの、地域の人たちに助けられ仕事に困ることはありませんでした。75年に榮一氏が社長就任。創業者の志や顧客、取引先、社員、地域社会に対する姿勢を社訓に反映しました。99年に榮一氏が急逝し、その息子の裕士氏が社長に就任。同友会で現在の経営理念「信頼関係のもと技術を生かし、価値の高い作品を顧客に提供することを通して、人々に満足と喜びを与える」を成文化しました。

 

 91年に本社を江差町に移し、同年に現社長の田畑昌伸氏が取締役として入社します。昌伸氏は総務部門で経理業務や労務管理のシステム化に注力しました。2002年には兄の裕士氏の後を継ぎ社長に就任。ところが09年に地元の建設系資材商社が経営破綻し、十数社が連鎖倒産します。田畑建設も破綻した会社の下請けとして、21000万円が回収不能となりました。同年8月には政権も変わり、建設業を取り巻く状況は一層厳しさを増し、社長就任後最大の試練を迎えました。

 

 そうした中で、地元の金融機関は返済や資金繰りなどに関して親身になってくれ、地元企業は受注工事の下請けとして指名してくれるなどの支援がありました。窮状を知った取引先も、全国展開のスーパーや家電量販店が道内出店する際に仕事を発注してくれました。おかげで経営は好転し、翌年からは黒字に転換。24000万円の債務も5年で返済することができました。

 

 田畑建設は創業者の志を受け継ぎ、伝統建築物の継承や、姥神大神宮渡御祭の巡行山車の建造など、地域と共に歩んできました。環境美化や交通安全、防犯運動なども積極的に行っています。20年には経済産業省から地域未来牽引企業に選定され、22年にはSDGs宣言を行いました。100周年を記念して、地元自治体に寄付もしました。

 

 昌伸氏は「これまで築き上げてきた信頼があったから、苦しい時に手を差し伸べて頂いた。その恩は決して忘れません。優先すべきは、顧客・取引先・社員・地域にとって必要とされる会社であること。私欲に走ってはいけません。受け継いだ理念を次の世代に繋いでいきたい」と語ります。