【速報】懸念材料は人手不足や資金繰り/2022年10―12月期景況調査
2023年02月15日
全指標で次期も悪化の見通し
中小企業家同友会全国協議会と北海道中小企業家同友会が四半期ごとに実施している景況調査結果(2022年10―12月期)がこのほどまとまりました。全国では2163社中815社が回答。北海道では642社中201社から回答を得ました。この結果について、北海学園大学経済学部の大貝健二准教授(中小企業論)にコメントを頂きました。(DI値は特に断りのない限り前年同月比、▲はマイナス、①―④は四半期)
北海道中小企業家同友会が実施した22年第4期(10―12月)景況調査では、業況判断DI(前年同期比)は前回調査の▲0・5から2・1悪化し▲2・6となった。軒並み改善を示している「全国企業短期経済観測調査」や中同協DORの結果とは異なっている(図1)。サプライチェーン(供給網)の改善、販売価格へのコスト転嫁の進展、「全国旅行支援」といった観光促進策が景況感改善の後押しとなったとする見方(日本経済新聞、22年12月14日)もあるが、本調査ではその実感にはまだまだ遠い。前回調査に引き続き、次期はほぼ全ての指標で悪化する見通しであることからも、厳しい状況が続くとみて良いだろう。
景況感を判断する主要指標をみると、売上高(前年同期比)、採算の水準、業況水準の各DIは、「ほぼ横ばい」か「やや改善」であるが、採算DI(前年同期比)はやや悪化を示した(図2)。また、仕入単価DI(前年同期比)は83・9と過去最高を更新。販売単価DIも上昇はしているが、仕入単価DIと同等の上昇幅であり、依然としてギャップは埋まっていない(図3)。1人当たり売上高と1人当たり付加価値のDIに関して、売上高は前回調査とほぼ横ばい推移であるのに対し、付加価値は悪化した(図4)。売上高は改善したとしても、仕入れ価格上昇分を販売価格に完全には転嫁できず、利益を減らしていることが採算DIの悪化という結果になっていると推察される。
今期調査において懸念される項目をいくつかピックアップしてみよう。第1に、人手の過不足状況である。「やや不足」と「不足」の合計である不足感が65%を上回り、過去最高値を更新。人手の過不足DIを業種別にみると、従来建設業は人手不足の代名詞のような感じがあったが、サービス業でも急速に人手不足を感じている結果となっている(▲67・9↓▲75)。
第2に、資金繰りの状況は、前回調査に引き続き、余裕感が後退し、適正感と窮屈感が高まっている。資金繰りDIを業種別にみると、製造業とサービス業でマイナス推移となったほか、規模別にみると依然として20人未満規模でマイナス推移である。「ゼロゼロ融資」の返済が始まっているが、原材料等の仕入価格の上昇、人手不足も相まって、思うように利益を出せていないため資金繰りを悪化させているのではないかと思われる。
1月18日に行われた景況調査分析会議では、地域的な課題・問題についても意見があった。例えば、道東(とかち、釧路)の景況感の悪化に関して、農業、とりわけ酪農、畜産の苦境がある。牛乳の需要低迷、多くを輸入に依存する飼料価格の急騰、値がつかない仔牛の販売価格など、大規模離農が今後生じるのではないかという懸念が高まっている。そうした影響が他産業へ波及している可能性への言及があった。
他方で、海外ではアメリカや中東でこれまでにないほど和牛需要が高まっていることも紹介された。日本が買い負けている状況の典型ともいえる状況の中で、飼料の輸入依存からの脱却、海外市場での販路にいかに食い込むかなども今後の選択肢になるだろう。
最後に、今期の自由記述の傾向についても言及しておこう。「異業種の新規事業(飲食店)をスタートさせ、集客のための広告等、建設業とは違ったことに取り組んだ」(建設業)、「コロナ後(ウィズコロナ)を考えて、新店舗開発をし出店。また、自社の強みを生かしたニッチな分野の商品開発をし、ネットも活用」(流通商業)といったように、厳しい状況であることは間違いないが、攻めの一手を打っているコメントが多かった。これらの取り組みを共有する、知恵を出し合う機会を増やしてレジリエンスを高めていくことに期待したい。