【わが人生わが経営 138】キョーツー（株）　代表取締役社長　藤山　幸伸氏（70）（函館支部）

2023年01月15日

現場主義を貫き46年

お客さんの喜ぶ姿が力に

　チルド食品やオフィス家具、スーパーやコンビニへの共同配送センターなどの運送事業をはじめ、倉庫業や引っ越し業など「道南地域の物流」を担うキョーツー。藤山さんは2003（平成15）年から代表取締役社長として会社を牽引してきました。

　藤山さんは1952（昭和27）年、函館市若松町で2人姉弟の長男として生まれます。幼少期からおとなしい性格だったといいます。函館東高校を卒業後、千葉工業大学に進学しますが、大学3年生の時に中退。

　ある日見たテレビ番組をきっかけに盲導犬インストラクターの道を志します。「人のためになれば」という思いから栃木県の養成施設でインストラクターになるため1年間勉強し、2年間インストラクターとして誠心誠意、盲導犬育成に努めました。

　そんな中、父幸三氏が共通運送の函館営業所を76（昭和51）年に立ち上げます。幸三氏に頼りにされ、盲導犬の試験を合格できなかったラブラドール・レトリバー1匹を連れて藤山さんは函館に戻ることにしました。

　トラック4台、従業員6名だった創業当初は、化粧品やＣＤなど札幌から来た小口の荷物集配が主な仕事で、勤務時間は朝3時から夜11時まで及ぶこともありました。「10年くらい働いたら、今後の進路を考え直そうと思っていた」という藤山さん。入社から10年が経った頃から仕事が面白いと感じるようになったといいます。

　それは藤山さんが荷物の振り分けを担当するようになったことがきっかけでした。トラックの台数も仕事も年々増えました。朝届いた荷物を、どう振り分けたらバランスよく配達できるか真剣に考えます。それがうまくいき、1日が無事終えられたときの達成感が嬉しかったそうです。車両の台数も増え、自社保有の倉庫業や引っ越し業務など担う仕事がどんどん大きくなっていきます。そうした業務も日々の集配の中に上手に組み込んでいく作業が面白く、お客さんにも満足してもらうとまたさらに達成感を味わえたといいます。

　「現場に出て現場に接することが仕事、すべては現場だ」。現場主義を貫き、入社から46年が経ちました。今ではグループ企業含めトラック200台と270名ほどの社員を抱えるまでになりました。

　藤山さんの仕事のモットーは断らないことです。「お客さんが喜ぶとこっちも嬉しくなる。常に何かしてあげたいという気持ちが芽生える」といいます。作業員として入った現場では、その仕事技術を学び、自社への応用にも尽力しました。「やったことのない仕事はチャンスだ」と考え、警察のパラボラアンテナやテトラポッドの運送など通常業務では運ぶことのないものにもどんどん挑戦していきました。

　「頼まれた仕事を断らないということは、新たな仕事を覚えるということ。新たなことを受けると新たなつながりができ、また新たな仕事に変わる」。こうした考えが今の結果につながっているといいます。

　さらに藤山さんは「買い手よし、売り手よし、世間よしの三方よしという言葉があるが、その言葉があるからそうしたわけではなく、自分がしてきたことが結果的に三方よしだと今となっては感じる」と振り返ります。だからこそ、売り上げや利益につながり、今の「頼りにされる」部分が増えてきていると実感するそうです。「キョーツーに頼めば人もいるし何でもやってくれると思ってもらえているのが嬉しい」とにこやかに話します。

　また地方の物流については「人口減が続く渡島・檜山ではバスが主な移動手段だが、赤字の部分が多く町からの補助を受けて成り立っていることが多い」とし、人と荷物を一緒に運ぶシステムができないかと考えています。「このままでは、やがて地方のスーパーも徐々に撤退し、運送する機会も段々減っていってしまう。道南一筋のキョーツーがそれを担わなければ」と思いを強くします。

　「地域の物流と人流、人の暮らしと経済を担うのはトラックといわれている。これからはそこに人の移動も担う〝客貨混載〟でいきたい」。そう藤山さんは未来を見据えています。

　同友会には友人の誘いで97（平成7）年に入会しました。支部では幹事長、副支部長を経て、現在は相談役を務めています。函館支部40周年記念で開催した道南やるべや市という企業展が印象深く、会合に行けば新たな気づきを得られるのが嬉しいといいます。