【レポート】北海道中小企業家同友会景況調査報告(2022年4~6月期)
2022年08月16日
景況感は改善も先行き見通せず
―仕入単価の上昇が続くなか、建設業の動向も懸念―
文責:大貝 健二
(北海学園大学経済学部 准教授)
北海道中小企業家同友会が実施した2022年第2期(4-6月)景況調査では、業況判断DI(前年同期比)は前回調査から26.0ポイントの大幅に改善し、2.2であった。同DIが水面上に浮上したのは、2019年第3期以来である。日銀短観や中同協DORなどの調査においても、今期は大きく改善している。とはいえ、これらの改善は素直に喜べるものではないとみてよいだろう。というのも、2021年4-6月期は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う緊急事態宣言、及びまん延防止措置等重点期間であったためである。そのため、前年同期比では改善しているのはある意味当然のことと言える。そのため、今期においても調査時点の足元の景況感を示す業況水準を基に、景況感を判断したほうが良いと思われる。今期の業況水準は、前回調査のマイナス31.1から14.8ポイントの大幅な改善を示したが、マイナス16.3にとどまっている。依然として景況感としては厳しいとみてよいだろう。
今期の景況調査から見える懸念材料は大きく3つある。1つは、天井を知らない仕入価格の継続的な上昇である。仕入単価DIは81.8と前回調査から10.3ポイントも大幅に上昇している。また、同DIは、2008年の世界同時不況期においても75.5であり、80を上回ったのは初めてのことである。確かに、販売単価DIも15.9ポイントもの大幅な上昇を示してはいるものの、両指標のギャップは縮小していない。仕入単価の上昇分を、販売単価へ転嫁できてはいるものの、非常に限定的であると理解してよいだろう。2つ目は、建設業の停滞感である。主要指標である業況判断、売上高(前年同期比)、採算(前年同期比)、採算の水準、業況水準では、他業種よりも改善幅は小さく、悪化さえしている。ウッドショックに端を発した資材価格の高騰によって新築需要が減退していることがその要因であると考えられる。第3に、次期見通しの弱さである。いずれの指標においても次期において大きく改善する見通しのものはない。円安の急進、ウクライナ危機による燃料や資材価格にとどまらない物価上昇など、以前にもまして先行きが見通せない状況である。政府によるコロナ対応はウィズコロナ、アフターコロナへシフトし、経済活動を抑制する動きは見られないものの、第7波ともいえる7月中旬からの感染急拡大がどう影響するか、注視が必要である。
このような状況下において、「今期の経営上の力点(自由記述)」を見ると、前回調査までとは異なり、ポジティブな記述が散見されるようになってきている。例えば、「社会環境の急激な変化の中でベースアップや、資料高騰に対する販売価格の見直し、社員教員の見直しを行った」、「人材育成のため毎週金曜日に勉強会。」(いずれも建設業)、「事前の営業強化と地域内循環へのシフト」(製造業)、「事業再構築補助金を活用し、新商品開発を進め、販売し、収益改善を計り生き残りをかけて行く考え。」(流通商業)など、企業を取り巻く外的環境の激変に対して、自社の経営を見つめなおし、勉強し、挑戦するという姿勢が見えてきたと筆者自身捉えている。もちろん、そうせざるを得ないところまで来たということでもあるが、先行きをどのように見据えるか、勉強会を通じて情報収集するだけなく、攻めに転じる意識をさらに醸成し、共有していくことも求められよう。
≪景況調査について≫
・景況調査は、回答者の意識・マインドを基に景気動向を分析する調査です。
・特に、同友会が実施する景況調査は、経営者の意識を反映するものであるため、景気動向がはっきりと表れやすいと言われています。
・景況動向、および「次期見通し」を自社の経営指針等の見直し等に活用してください。
≪DI値について≫
・DI値は、「良い」と回答した割合(%)から「悪い」と回答した割合(%)を引いた数値です。
・「良い」と回答した企業が多ければ多いほどDIは高水準で推移するが、その逆もしかり。
・景況調査では、(1)DI値の水準(プラスかマイナスか、また水準はどの程度か)、(2)前回調査からの好転幅、悪化幅の大きさを主に見ていきます。
・DI値の変化幅について
①1ポイント以内の場合:「ほぼ横ばい」と表現します。
②1~5ポイントの場合:「やや」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。
③10ポイント以上の場合:「大幅な」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。