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【1世紀企業 71】吉本仏壇店(苫小牧市)

2022年10月15日

 

昭和初期の社屋

 

顧客の想いに寄り添い提案 東胆振最古の仏具店

 

 1917(大正6)年に苫小牧市錦町で創業した吉本仏壇店は、105年にわたり同じ場所で営業を続ける東胆振で最も古い仏具店です。

 

 創業者は島根県の寺院の子弟だった故・吉本竹一氏。宮大工として鍛錬を積み、苫小牧へ移住し、その技術と経験を仏壇づくりに注ぎました。続く二代目の故・重治郎氏も職人として共に腕を磨きますが、第二次世界大戦で物資が不足し、仏壇に欠かせない金箔の使用制限令が施行され仕入れが困難になります。兵器製造のため真ちゅう製の仏具はすべて政府に供出したため、終戦後は売る物がない状態で再スタートしました。

 

 その後も仕入れが難航し、手作業での仏壇製造は時間と費用がかかることから、仏壇づくりからは手を引くことになります。重治郎氏は「家庭で誰かが亡くなるのはつらい。私たちはその悲しみや想いに寄り添い、向き合う。商売を越えた人間同士の触れあいこそ、互いの人格形成につながる」という思いから「豊かな心を創る」を理念に掲げます。

 

 「仏壇・仏具は大切な人を亡くされた方との商売。商行為を通じて、お客さんとの心の接点を感じ取ってきたのではないか」とその思いを引き継いだ三代目の俊憲氏。この頃、錦町にひしめいていた商店は、住宅地が東西に広がったことや、土地の高度利用法に伴い新たな出店が難しくなり、シャッターを下ろす店が増えてきました。

 

 仏壇を取り巻く環境も変化します。10年ほど前から仏間のない家が増え、洋室にもなじむ家具調の仏壇の需要が高まっていきます。また宗教離れが進み、檀家の減少から仏具の新調が難しくなっている寺院も少なくありません。インターネット販売が台頭し、経営環境は厳しさを増していきますが、顧客のニーズや生活様式が著しく変化しても、供養や祈りの心そのものは変わりません。

 

 俊憲氏は「単に仏具を売るのではなく、寺院とお客様の橋渡しや、仏事の困りごとなど、様々な相談に乗ることを大切にしたい」と顧客に寄り添ってきました。対面販売の強みを生かし、顧客の価値観や生活環境、予算などを丁寧に聞き取って提案。また「仏壇のおせんたく」として、家庭の仏壇や寺院の仏具の金箔のはがれ、傷の修理、洗浄にも対応します。線香やろうそく、仏具が並ぶ店舗にはお客様が気軽に訪れる、地域交流の場になっていきます。

 

 四代目として承継する吉本一憲営業部長は2019年に同友会へ入会。「同友会は異業種ならではの経営の悩みや成功例、考え方を学べる貴重な場。これからも地域を見守りながら、誠実な経営を続けたい」と抱負を語ります。