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【講演録】「積雪寒冷地の都市デザインと地域創成」/北海道大学工学研究院長・工学院長・工学部長 教授 瀬戸口 剛 氏

2022年06月15日

北海道大学工学研究院長・工学院長・工学部長 教授 瀬戸口 剛 氏

 

 10年前に新しくなったJR稚内駅。この稚内駅再開発計画に携わらせて頂いた関係から、どのような計画を考えたか、今後の積雪寒冷地の北海道をどう考えていくかについてお話したいと思います。

 

キタカラ

 新しい稚内駅の複合施設の名前は「キタカラ(KITAcolor)」です。北から創(はじ)める。日本の一番北に位置する稚内市からはじまり、最終的には世界各国まで、稚内の色に染めていきたい。そういう思いが込められています。

 

 日本で一番外国に近い都市の稚内市。稚内市からサハリンまではたったの42㌔ですが、手前の豊富町までは45㌔で、距離的には隣町よりサハリンの方が近いのです。そのため、隣国ロシアを大切にしようというところから、都市再生プロジェクトが動き出しました。

 

 その1つが稚内駅の再生でした。日常交通が500人の駅ですが、駅を単に建て替えるのではなく、街の再生を念頭に、様々な機能を駅施設に盛り込みました。

 

 積雪寒冷地の北海道でしかも北端の稚内で、街の中に施設が点在するよりは1つに集約した方が便利だと考え、道の駅やバスターミナルをはじめ、映画館、高齢者住宅の機能を設置しました。駅の真上に高齢者住宅があるのは稚内市だけだと思います。

 

終点駅のデザイン

 稚内駅は北海道最北端の終点駅のため、デザインにはこだわり、列車を見ながら乗車出来るよう駅を60㍍後退させました。建物2階には鉄道ファンの写真撮影スペースとしてデッキを設置。また、稚内市は北からの吹雪が多いため、街と港を繋ぐ駅前通りに吹きだまりが発生しないよう風雪シミュレーションを繰り返し、建物のデザインを固めていきました。

 

 地方都市では駅の灯りが重要な役割を持ちます。建物北側の壁面にガラスを用い開放的にし、JRの終電時間まで明るく外を照らすよう工夫しました。また、南側の壁面には太陽光パネルを設け、発電も行っています。

 

人口減少×再エネ

 北海道が抱える問題は人口減少で、優位性を持つのは再生可能エネルギーです。エネルギーの輸入が今後困難になると、ますます再エネのポテンシャルは上がり、北海道の位置付けや役割はもっと大きくなっていくと私は考えます。北海道の各種再エネ賦存量はどれをとっても全国上位。このポテンシャルを活かすことが、地域再生、地域創成につながると考えています。

 

 稚内市の風力発電や鹿追町のバイオガスプラント、中標津町のミルクヒートポンプシステムなど各地域で多様な取り組みが行われています。そうした中で大切なことは、いかに地域で仕事を回すか、施設や技術を地元でメンテナンス出来るようにするかです。これによってお金が地域内で回り、地域創成につながっていきます。持続可能な地域づくりを地域循環型でやっていく―。北海道がこれから目指すべきことなのです。

 

 (511日、HoPE総会記念講演より)

 

せとぐち・つよし=1962年生まれ。早稲田大大学院後期博士課程修了。2010年より北大大学院工学院工学研究院教授。専門は社会基盤、建築計画、都市計画。