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同友会は、中小企業の繁栄と、そこで働く全ての人の幸せを願い、地域社会の発展のために活動しています。

気流

2022年05月15日

 19世紀、イギリスの歴史家で批評家のトーマス・カーライルは、著書「衣装哲学」の中で「雄弁は銀、沈黙は金」と記しました。一方、世界では欧米諸国を中心に「沈黙は承認」という言葉も広く使われます。

 

 札幌地裁は325日、元首相の街頭演説中にヤジを飛ばした市民が排除された訴訟で、対応した警察官の行為を違法とし「表現行為が場にそぐわないと判断し、制限したと推認する」との判断を示しました。判決の要旨には、「表現の自由が無制限に保障されるものではない」としつつも「憲法211項が保障する『表現の自由』を侵害した」「表現の自由は民主主義社会を基礎付ける重要な権利」と記載されています。

 

 歴史を振り返ると、言論の自由を封殺する社会が、権力の偏重や情報統制ひいては強権的な政治的独裁を招く事例は、戦前の日本をはじめ中国の少数民族同化政策やミャンマーの政変、ロシアのウクライナ侵攻など枚挙にいとまがありません。

 

 日本では、「KY(空気を読めない)」や「忖度」という流行語が象徴するように、今日でも沈黙を美徳とする風潮が根強いと感じます。この訴訟を他人事でなく我が事として考えると、私たちの会社、組織、家庭には、誰もが主体的に自由に発言し、少数意見や〝声なき声〟に耳を傾ける風土が根付いているでしょうか。今こそ同友会理念のひとつ「自主・民主・連帯の精神」の深い意味を、共に改めて問い直す時だと感じています。