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【速報】コロナとウクライナ危機、どう乗り越えるか 業況水準の大幅な悪化/2022年1-3月期景況調査

2022年05月15日

 中小企業家同友会全国協議会と北海道中小企業家同友会が四半期ごとに実施している景況調査結果(20221―3月期)がこのほどまとまりました。全国では2203社中871社が回答。北海道では768社中211社から回答を得ました。この結果について、北海学園大学経済学部の大貝健二准教授(中小企業論)にコメントを頂きました。(DI値は特に断りのない限り前年同月比、はマイナス、①―④は四半期)

 


 

 北海道中小企業家同友会22年第1期(1―3月)景況調査では、業況判断DI(前年同期比)は▲238と、前回調査から159ポイントもの大幅な悪化となった。今期は、オミクロン株による新型コロナウイルス感染症の拡大(第6波)に伴う、まん延防止等重点措置期間を含んでいる。それに加え、2月下旬からのロシアによるウクライナ侵攻によるインパクトもわずかではあるが含まれている。そのため、日銀短観や中同協DOR同様に、景況感は急速に悪化している(図1)。

 

 

 調査時点の足元の景況感を問う業況水準を見てみると、前回調査から237の大幅な悪化を示し▲311となっている。また、売上高や採算、採算の水準DIを見ても、いずれも悪化、ないしは大幅な悪化であり、企業マインドが急速に冷え込んでいることが考えられる(図2)。

 

 

 次期見通しに関しては、いずれの指標に関しても改善の見通しではある。しかし、まん延防止等重点措置は解除されたものの、原材料や燃料の高騰、円安急進など経営に影響を与える要素は多い。さらにウクライナ危機の影響が、次期以降の調査で本格的に表れて来るとすれば、景況感が改善するとは考えられない。コロナによる打撃に加え、世界情勢不安による資源価格や輸送コストの高騰など、これまで以上に中小企業経営が翻弄される事態であることは言うまでもない。

 

 特に、今期調査において、今後の動向を懸念する要因を見てみよう。第1に、採算の水準の大幅な悪化である。毎年第4四半期(10―12月)から第1四半期(1―3月)にかけて、採算の水準DIは悪化する。しかし、コロナショック以降、同水準の第1四半期から第3四半期にかけての改善幅が徐々に小さくなっており、今期の悪化で水面上すれすれにまで下がっている。業種別にみると(図3)、流通商業、サービス業でマイナス(赤字)に転じているほか、規模別にみると、100人以上規模と、100人未満の各規模層との乖離が進み、企業規模が小さいほど、マイナスに転じている。次期調査でどの程度改善するか、注視が必要である。

 

 

 第2に、仕入単価DIのさらなる上昇である。今期では同DIが714と前回調査より61ポイント上昇した(図4)。サブプライムローン問題に端を発したリーマンショック期の75508年第3四半期)と比肩する状況である。販売単価DIも上昇を続けているものの、ギャップを縮小させるほどのものではない。資材や燃料価格の高騰をいかに販売価格に転嫁できるかが大きな課題である。

 

 

 第3に、資金繰りにおける窮屈感の高まりである。微増とはいえ、21年第1期をボトムに4期連続で上昇し続けている。「ゼロゼロ融資」の返済も今後本格的に始まるなかで、採算の水準の落ち込みとともに、今後の動向に注視が必要であると思われる。他方で、この1年間で景況調査への回答企業数が減少し続けている。企業規模別にみると、20人未満規模の回答減少数が著しい。また、景況感の悪化推移の中で、「先が一段と見通し出来ず廃業を考えるようになってしまった 残念!」といった自由記述が出て来ている。

 

 

 

 これらのことが示唆するのは、景況調査に表れて来ないところで、中小企業経営の苦境、困難が広がっているのではないかということである。経験したことのない経営環境の変化が今後も続くと考えられる。いかにしてこの変化を乗り越えるか、同友会活動を通じた英知の結集と連帯が求められると言えよう。