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【わが人生わが経営 130】(株)システムサプライ 代表取締役社長 門脇 武一さん(72)/オホーツク支部

2022年04月15日

 

情報と地域資源融合産学官連携で活動を展開

 

 「(同友会の)一方通行ではないコミュニケーションを重視し、会員同士で支え合う『共育』の理念は、システムサプライの経営指針にも通じています」

 

 門脇さんは、1949(昭和24)年に端野町(現・北見市)で農家の長男として生まれます。小・中学生のころは家業の手伝いが日課だったと言います。高校卒業後は大学進学を希望していましたが叶わず。将来を地元や農業に目を向けることなく、札幌のコンピュータ専門学校に進学。ハードウェアやソフトウェアについて勉強しました。

 

 今ほど普及していなかったコンピュータの知識を付けたものの、当時は大学紛争などの社会問題が噴出しており、社会に出るにはもっと広い知識が必要との思いから、大学での学びに再挑戦します。大学では、さまざまな社会的課題に興味を持ち、自ら社会科学研究会を立ち上げ、仲間と共に水俣病や公害問題をテーマに活動。学費を稼ぐため学内での懸賞論文に応募したりもしました。

 

 就職はコンピュータと通信を標榜していた日本電気(現・NEC)に入社。当初から電電公社(現・NTT)の電気通信研究所との共同研究に参画し、アナログ通信をデジタル通信へ転換する研究に携わり、ソフトウェアの基礎研究や開発に従事しました。27歳のときに結婚し、都内で家庭の基盤を築いていた門脇さんですが、30歳のとき父がくも膜下出血で倒れたと連絡が入ります。東京で働きつつも家業を継がなかったことへの負い目を感じ、悶々と日々を過ごしたと言います。

 

 これからのキャリアに漠然と不安があったこともあり、独立を決意。1歳と3歳の子どもと妻を連れて端野町に帰ります。最初は失業手当をもらいながら家業を手伝い、83(昭和58)年に法人化しシステムサプライを設立しました。「地元の仕事をしなければと強く思うも研究職だったため、営業どころか名刺の出し方すらわからなかった」と門脇さん。

 

 妻の手を借りつつ商工名鑑や電話帳を頼りに網走管内をくまなく一軒一軒チラシを持って飛び込み営業します。ソフトウェアを売ろうにも、当時はコンピュータはなじみのないものでした。チラシのカタカナから「サラ金の営業と間違われ、門前払いを受ける毎日だった」と当時を振り返ります。

 

 北見で仕事をするため、前職の知り合いにアポを取って東京にも出かけます。そこで以前の上司がNEC関連会社の社長をしていることを知り、相談した結果、NECが納入している網走管内の情報通信システムのメンテナンスやエンジニアリングの仕事を受けられるようになりました。

 

 しかしまだ課題は残ります。ハードウェアが無ければソフトウェアを売ることができず、またその開発はグループで行うため、人を集めなければなりません。「仕事と人を同時に探さなければならなかったので苦労した」と言います。

 

 そこでハードウェアとセットでソフトウェアを販売するとともに、産学官に関わらずコンピュータや通信に知識のある人達に声をかけ、オホーツクマルチメディア協会などを組織化。「地域の情報化」をテーマに情報交換や講演会などオホーツク管内で普及活動に取り組み、インターネットプロバイダーも95(平成7)年に立ち上げました。活動していく内に輪が広がり、人のつながりの大切さを実感したと言います。

 

 同友会もその一つでした。新聞でたまたま同友会の講演案内を見かけて参加。経営者の考え方をもっと知りたいと考え、84(昭和59)年に自ら入会を決意しました。入会後は会員同士と切磋琢磨し、98(平成10)年に支部長に就任。6年間務めました。就任翌年、「活動の場はオホーツク」という思いから支部名を北見支部からオホーツク支部に改称し、会員同士の連携を重視して活動しました。

 

 「同友会理念の具現化には特に地域の産学の連携が必要」と考えた門脇さんは、北見工大や北海道日赤看護大、東京農大オホーツクキャンパスにも同友会への入会を勧誘しました。

 

 地域の情報化が農業の情報化へと進み、2002(平成14)年、マルチメディア協会や同友会活動で繋がった人たちと、日本で初めて株式会社による農業生産法人イソップアグリシステムを設立。情報と地域資源の融合を図り持続可能な地域のカタチの形成に挑戦しています。来年には会社は40周年を迎えます。バイオエコノミー創発をビジョンに盛り込みながら後継者育成に取り組みます。

 

かどわき・たけかず 1949年4月24日、端野町(現・北見市)出身。慶応義塾大卒業後、NECを経て83年にシステムサプライを設立。代表取締役社長に就任。

システムサプライ=本社・北見市。情報システムの企画・開発・運用管理など。従業員28名。