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同友会は、中小企業の繁栄と、そこで働く全ての人の幸せを願い、地域社会の発展のために活動しています。

【講演録】「経営者の心情を語っていますか?安心して働ける企業づくり」/香川県ケアマネジメントセンター代表取締役(中同協経営労働委員長) 林 哲也 氏

2022年03月15日

 税理士、行政書士、社会保険労務士の一体的なサービスの提供を図る、合同経営は1995年に創業。ケアプラン作成などメインとする香川県ケアマネジメントセンターは、99年に設立しました。香川同友会には合同経営を創業した翌96年に入会しています。

 

 同友会の会員は、従業員10名未満の会社がほとんどです。社員がいなければ経営者は所得を全て手にできる一方、社員が入れば経営者の所得は下がっていきます。そうすると次第に売り上げにとらわれ、「社会に役立つ仕事をしたい」といった創業時に掲げていた思いが消えてしまいます。自分たちが登る山を見失わないために、事業希望が小さい企業は「何のために経営しているか」を明らかにした文書を残しておく必要があります。そのためにあるのが「経営指針」だと思います。

 

 我が社の経営指針書は、2000年から10年間にわたる悪戦苦闘の積み重ねからできています。日々発生している問題を経営指針に落とし込むことはとても重要で、私たちは「残業」「中核幹部の退職」「お局問題」の3つの大きな失敗から学んだことを位置づけています。また、失敗を失敗で終わらせないことも大切です。失敗を整理するとノウハウになるからです。我が社の是正報告書は毎年10―20件ほどに上りますが、全て経営指針書に載せています。明記することは仕組みの変革につながります。

 

 我々は、毎年11月に開く会社の総会で経営指針を更新しています。このため、社内では事前に総会までのロードマップを示し、社員に更新に向けた変化を促しています。まずは3月末の全社面談から始まり、4月に上半期の振り返りや下半期の目標といった中間総括発表、その後も顧客満足度調査、職場環境アンケート、顧客満足度調査、職場環境アンケート、企業変革支援プログラムの実施など、経営指針の更新を社内の仕組みの一つとして構築しています。

 

 さらに、経営者の役割として社員に経営者の覚悟、心情を語れるものを用意しておく必要があると思います。会社は経営者の私物ではありません。立ち上げたのは経営者でも、現在までの会社は社員が力を合わせて生み出してきたものだからです。社員は会社の考え方に対し、常に理由を求めています。未来の経営に対する基本的な考え方、目指す背景を「なぜならば」と経営者がしっかりと示すことができなければいけません。

 

 香川同友会の経営指針運動を振り返ると、①経営者がなぜ経営しているのかを覚悟をもって社員に語り広げているか②経営指針を社内で共有・更新しているか③経営者が数字に弱い―の3点がいつも議論になっていました。

 

 経営者の心情を文章にして社内に共有すればある程度は伝わりますが、それに感情が加わるとさらに社内での理解が深まります。言葉にして思いをのせることが大切です。冷静に自分の歴史を振り返って見ると、今の経営に至る原因や発見があります。書き表すのは大変ですが、自分の経営を語るルーツを導き出せることができるはずです。

 

 (125日、経営指針実践セミナー)

 

企業概要=行政書士法人・社会保険労務士法人・税理士法人・居宅介護支援事業。1995年設立。従業員62名(パート社員含む)。