【講演録】地域を支え地域に支えられる企業づくり/セコマ 代表取締役会長 丸谷 智保氏
2022年01月15日
事業の本質を捉える
コロナは、事業基盤を見直す機会になったと思います。セコマの売上前年比推移を見ると、コロナの感染拡大開始から数カ月は減少しましたが、立地別の凹凸はあるもののその後は回復。今も好調でコロナ前を16カ月連続で上回っています。私はこの理由は地域に密着し、固定客に支えられている基盤があったからだと考えます。
グループ会社を含む全体の年間売上は2000億円ですが、何で積み上がっているかが重要です。年間販売数量は9億個で、1個当たりにすると222円。そうすると我々の事業の本質は1個222円の商品を心を込めて売り、買ってくれる人を大切にすることだと分かります。
もう一つは、地域を大事にすること。地域に密着することで我々の事業は成り立っています。大変な今だからこそ、皆さんも事業の本質を問いかける必要があるのではないでしょうか。
高齢化と過疎化に対応
当社の年金・生活保護・給料日支給日別の売り上げデータによると、最も多いのが年金、次に生活保護。高齢化とは社会保障収入に依存する社会という一面が見えます。
高齢化・過疎化で1番の問題は、地域に店舗が無くなることです。紋別市上渚骨地区は人口900人、高齢化率は4割を超え、通常はコンビニの成立が不可能な地域でした。地域住民の陳情を受け、当初は使われていないドライブインの活用を考えましたが、違法建築と判明して一度計画を断念。すると住民がお金を出し合ってドライブインを買い取り、更地にして市に寄付し、市も建設費用の約半額を補助金として出しました。地域のニーズを受けて出店するので、商品も聞き取りして用意したところ、1日の売り上げは目標を上回りました。
高齢化・過疎化地域でも黒字化を達成できたのは、広いマーケットでなくとも地域に深く密着したからです。マーケットは2次元で捉えがちですが、地域密着度や固定客といった要素を加えた3次元で考えることで、深く広いマーケットが見えてきます。
付加価値から削減価値へ
一定の社会保障収入に頼る高齢化が進む中、付加価値の向上で値段も付加されることに消費者は追いついていけません。そこで原価を下げることで利益率を一定のまま保つ「削減価値」の考えが必要ではないでしょうか。
サンドイッチの具材のレタスは、加工がなく原料価格そのものが反映されますが、台風で収穫できず流通量が減ることなどで価格が日々変動。市場に影響されない価格を維持するため、セコマは農業生産法人も手掛けています。
苫前町の農家では、表面に傷がある規格外のメロンを産業廃棄物として捨てていました。セコマでそれを買い取り、搾汁・冷凍したものをメロンソフトとして商品化し、大ヒットしました。また、広大な面積の北海道ですが、物流網を生かして別店舗の荷物も請け負うなど、本来コストである物流を資産として利益に変えることができます。それでも原材料の高騰で値上げせざるを得ないものもありますが、何かを探して値上げ幅を小さくし、かつ会社の利益が下がらないような努力が必要です。
(12月8日、第9期経営者大学パートⅢ公開講座)
まるたに・ともやす=1954年生まれ、池田町出身。2007年にセイコーマート(現・セコマ)に入社。代表取締役社長などを経て、20年から現職。 |