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【わが人生わが経営 127】(株)前田美粧 取締役会長 前田 昭夫さん(77)(くしろ支部)

2022年01月15日

 

夫婦二人三脚で経営 「お客様大切に」を信条に

 

 「お客様を大切に」という信条を貫き通して経営にまい進してきた前田さん。「当たり前ですが、お客様がいるから仕事が成り立つのです。たくさんのお客様に支えられながら、なんとか今まで会社を続けてこられました。そして何より、私が仕事に打ち込んでこられたのは奥さんの支えがあったおかげなのです」と、歩んできた道のりを振り返ります。

 


 

 でんぷん工場や製材工場を経営し、町議会議員なども務めていた父と専業主婦の母の間に、9人兄弟の5男として1944(昭和19)年に生まれます。幼少期は近所の子どもたちをまとめる、やんちゃなガキ大将。「みんなの先頭に立って、いたずらばかりしてた」と照れながら話します。

 

中学生のころ、父の経営していた工場の経営が傾いてしまい、家計を支えるため植樹や文化まき束ね、石炭詰めなどのアルバイトをします。当時の夢は海上保安官になることでしたが、進学はかなわず。59(昭和34)年の春、15歳で繊維製品を取り扱うヤマキ高橋商店へ入り、釧路市で働き始めます。20歳ごろまでは配達の仕事に奔走。中学生からアルバイトに頑張っていたため、「どんなことをしていても、つらいと思ったことはなかった。中卒で学がなかったですから、人に言われたことは何でも素直に聞いた」と笑います。

 

当時は主にタオルや靴下、針、糸などを取り扱い、市内の衣料品店などを中心に自転車で駆け回る毎日。20歳で運転免許を取得してからは営業を担当します。勤務先は時代の流れとともに繊維製品卸から理美容用品の取り扱いへ事業を転換。72(昭和47)年に社長からの勧めもあり、自らも出資してアメリカ製の「ヘレンカーチス」という理美容用品を専門で取り扱うヤマキ産商を設立し独立。社長に就任します。「事務員2人と自分だけ。ヤマキ高橋の社屋を一部間借りした会社だった」

 

6年の間に事業を軌道に乗せることができ、78(昭和53)年に前田美粧として夫婦二人三脚で会社経営に乗り出します。しかし、理美容用品卸の会社として新たなスタート切ったまさにその時、第一次オイルショックの波が打ち寄せます。「オイルショックで商品が無くなってしまうと、とにかく売れた。しかしその後は、どのお客様も在庫を抱えており、商品がまったく売れないという状況に陥った。その窮地を救ってくれたのはやはりお客様でした」

 

いつものように取引先を回っていると、ある女性社長に「何か悩んではいないか。ちょっと付いておいで」と声を掛けられ、連れられていったのは釧路信用金庫の理事長室。「入ったこともない理事長室に入れてくれて、理事長に紹介してくれた」。また、ある年の年末のこと、その女性社長の会社を訪れると従業員から「社長から前田さんに渡すように預かっています」と資金を貸してもらいました。「何かと気に掛けてくださり、都合を付けてくれたのです。あのご恩は忘れることができません」

 

理美容用品を小さいロットで売り出すネット通販の広がりで、個人で買えるようになったと現状を考えます。「だからこそ、お客様ひとりひとりを大切にする地道なお付き合いが大切になってきているのです」と語ります。

 

イタリア製の「インディゴ」というブランドをはじめ、ネットでは販売されない製品を取り扱うなどお客様の要望を第一に考えた販売に加え、美容機材の修理も引き受けます。「依頼があれば、日曜日でもすぐに対応する。お客様に喜んでもらい、信頼関係を築くことが一番大切です」

 


 

 同友会は83(昭和58)年に入会。講演会や勉強会が開かれれば、積極的に参加します。「中卒の私は、気兼ねなく何でも質問できた」。先輩方との関わりから経営理念や戦略のアイデアを学び続け、自社の経営に取り入れて行きます。「つらいと思ったことはまったく無く、夢中で同友会の活動に取り組んだ。その中で育てられてきたから、事業を続けてこられた」と振り返ります。「やる気にさえなれば勉強できる場はたくさんある。自分が勉強させていただいた場は、同友会です」と言い切ります。

 

 「趣味は妻の顔を見ること」と語る愛妻家の前田さん。「同友会で学んだことは、会員の皆さんは本当に奥様を大事にしていること。仕事に打ち込めるように支え続けてくれたのは、奥様ですからね」と笑顔を見せます。2021(令和3)年6月に2代目社長となった長男・俊明さんを夫婦二人三脚で支え、今日も奔走します。

 

まえだ・あきお 1944年2月19日、弟子屈町出身。59年にヤマキ高橋商店に入り、72年にヤマキ産商として独立。

前田美粧=本社・釧路市。1978年創業。理美容用品機材卸業。資本金1000万円。従業員5名。