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【速報】業況水準の停滞続く/2021年7-9月期景況調査

2021年11月15日

 中小企業家同友会全国協議会と北海道中小企業家同友会が四半期ごとに実施している景況調査結果(20217―9月期)がこのほどまとまりました。全国では2245社中962社が回答。北海道では771社中241社から回答を得ました。この結果について、北海学園大学経済学部の大貝健二准教授(中小企業論)にコメントを頂きました。(DI値は特に断りのない限り前年同月比、はマイナス、①―④は四半期)

 

観光業や飲食店中心に厳しさ続く 仕入単価上昇分の転嫁が課題

  北海道中小企業家同友会21年第3期(7―9月)景況調査では、業況判断DI(前年同期比)は、36㌽のやや悪化(図1)。前回調査までは、201月から続くコロナ禍の影響により、大きく落ち込んだ反動で4期連続の改善を示していた。しかし、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言の発出、その延長により、観光業や飲食店を中心に厳しい状況が続いている。そのため、景況感を業況判断ではなく、調査時点の足元状況を問う業況水準から把握すると、マイナス162からマイナス193へと31㌽のやや悪化。とはいえ、マイナス20に迫る推移であり、厳しい状況に変わりはない。

 

 

  次期見通しを見ると、業況判断は140㌽の大幅な悪化見通しでマイナス218、業況水準は43㌽のやや悪化見通しでマイナス236と、ともにマイナス20以下へ推移。ただ、注意すべきは回答時期が8月下旬から9月中旬で、コロナ第5波の収束見通しが立たず、緊急事態宣言の延長などネガティブな要素が立ちはだかっていた時期ということ。ワクチン接種が進んだこともあってか、新規コロナ陽性確認者が減少に転じ、北海道は101日に緊急事態宣言が解除。1018日からは、札幌の飲食店でも時間短縮制限が解除され、経済活動を再開する方向に舵が切られた。感染再拡大の懸念はあるものの、冷え切った経済が活性化することに期待したい。

 

  とはいえ、次期見通しで懸念される要因も今回の調査では散見された。第1に、仕入単価の上昇が続いていること(図2)。木材や鋼材、半導体などの世界的な需要拡大と供給不足に加え、燃料価格の高騰に起因するが、これらの上昇分を販売単価へ転嫁できるかが課題となろう。第2に、指標の1つである「採算水準」が傾向的に落ち込んできているように思われる(図3)。昨年第2期で大きく落ち込んだ後、持ち直してきているようにも見えるが、業種別では建設業とサービス業が大幅に悪化している(図4)。また、規模別では20人未満がゼロに近い水準で推移し、50―99人規模層が大幅に悪化。次回調査でどこまで改善するかがポイントになる。第3に、地域別の動向では、道東(十勝・釧路)の次期見通しが大幅に悪化していることも今期調査の特徴。十勝と釧路、地域ごとの精査は必要だが、釧路は日本製紙が8月に工場閉鎖したインパクトが、見通しに表れているのかもしれない。

 

 

 

 

  最後に、今期調査に寄せられた「今期の経営上の努力」で特徴的なものを紹介。「材料等の上昇を工事単価に反映させ利益確保に努めた。まだまだ材料の上昇が続く見込みなので出来るだけ工事単価に反映させていきたい」(建設業)、「新型感染症に大きく影響を受けた販路から新たな販路の開拓を進めている。また今回の経験から事業の継続継承について考え始めた」(製造業)、「飲食店ではオリジナル冷凍商品を23アイテム増やし外販が大きく伸びた。10年以上前から取り組んでいた外販が、コロナ禍の2年間で2倍に伸びたので今後もオリジナル商品の開発に力を入れていく」(流通商業)、「昨年度から継続して、中堅社員に対するマネージメント教育を実施して、次世代の経営層を育成する。業務改善プロジェクトを社内で立ち上げ、抜本的な社内改革を進める。生産性向上を進めるため、ムダ、手戻り作業削減の徹底減を社内で、周知推進している」(サービス業)