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【速報】4期連続改善も二極化/2021年4-6月期景況調査

2021年08月15日

 中小企業家同友会全国協議会と北海道中小企業家同友会が四半期ごとに実施している景況調査結果(20214―6月期)がこのほどまとまりました。全国では2261社中967社が回答。北海道では773社中265社から回答を得ました。この結果について、北海学園大学経済学部の大貝健二准教授(中小企業論)にコメントを頂きました。(DI値は特に断りのない限り前年同月比、はマイナス、①―④は四半期)

 

小規模層は低水準、仕入単価上昇を懸念

 北海道中小企業家同友会21年第2期(4―6月)景況調査における業況判断DI(前年同期比)は、194㌽もの大幅な改善を示した(図1)。

 

 

 これは、昨年7―9月期調査から4期連続の改善であり、また2期連続の大幅な改善である。他方で、今期の足元の景況感を問う業況水準DIは、前回調査から118㌽の大幅な改善を示すもマイナス162にとどまった。1年前の同時期と比べると改善はしているものの、依然として景気は悪いという解釈が妥当だろう。次期見通しに目を向けると、業況判断DIは50㌽悪化しマイナス92、業況水準DIも87㌽悪化しマイナス249となる見通しである。今期の業況判断を「全国企業短期経済観測調査(短観)」や「中小企業家同友会全国協議会景況調査(DOR)」と比較してもほぼ同様の傾向である(図2)。

 

 

 今期の景況調査では、今後の状況を大きく左右しかねない懸念材料が見られた。第1に、業種別の景況感の差異である。これまで大幅に悪化していた製造業と流通商業、サービス業の業況判断DI(前年同期比)は大幅に改善したものの、他業種と比較して堅調だった建設業で改善ペースが鈍化していることである。同様のことは業況水準にも表れており、先行きに注意が必要であるように思われる(図3)。

 

 

 第2に、規模別に各指標の推移を確認すると、景況感の改善基調において、20人未満規模の企業と20人以上の企業で差異が生じてきているように見られることである。とりわけ、採算DI(前年同期比)や採算の水準DI、資金繰りDIなどで小規模層であるほど低水準であり、規模間格差が生じていることが懸念される。第3に、仕入単価の急上昇である。前回調査からも仕入単価DIは上昇基調ではあったが、今期では174㌽の大幅な上昇である。他方で、販売単価DIはわずか3㌽の上昇にとどまる。仕入単価の大幅な上昇を、販売単価を上げることでカバーできなければ、当然のことながら経営を圧迫させる材料になり得る。実際に、今期の経営上の問題点でも、「仕入単価の上昇」が大きく回答割合を上昇させていることに加え、次期の経営上の力点においても、「人件費以外の経費節減」の回答割合が上昇している。ウッドショックに加え、燃料や材料費の高騰が今後どのように推移するか、注視する必要があるだろう(図4)。

 

 

 715日に開催された分析会議では、今期の改善基調をどのように解釈するかで多くの意見が出された。なかでも、K字回復と言われている二極化を伴った回復基調に関しては、「個別企業レベルの対応として、コロナ禍でも付加価値を上乗せできている企業とそうではない企業との差が生じているのではないか」、その結果として「相対的に小規模層で売上が戻らず、経営が苦しくなっているのではないか」といったコメントが印象に残っている。

 

 最後に、今期の調査に寄せられた「今期の経営上の努力」で特徴的なものを紹介する。「現状維持が精一杯」(流通商業)といった現状の厳しさを訴えるものや、「社員のメンタルのフォロー」(製造業)、「メンタルヘルス分野への注力」(サービス業)など、「メンタル」という言葉が散見された。そのほか、「コロナの影響で海外から原材料の調達が困難になり海外の原材料を使用しない製品作りを行なう」(製造業)、「eラーニング活用、オンラインによる専門領域への強化(研修機会の拡大)、金利低下局面を利用した設備投資販促手段についてHP刷新に向けた準備打ち合わせ(売込色を弱めオンラインにより対応したサービス転向)」(サービス業)など、コロナ禍での積極的な対応を行う様子もうかがえる。