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【講演録】「ポストコロナ時代の健康なまちづくり」/千葉大学予防医学センター教授 近藤克則氏

2021年05月15日

◆ゼロ次予防とは

 認知症になりやすい・なりにくいまちがあります。24市町村を対象に認知症発症率を比較すると、結果は他と比べて3倍以上認知症になりやすいまちがありました。環境によって発症率が変わるのならば、その条件を調べてまちづくりに生かそうという考えが「ゼロ次予防」です。社会環境に着目し、どのような地域社会が病気を生み出すのかを調べ、暮らしているだけで健康になれるまちづくりを目指すものです。

 

 環境としては、人口密度が高い自治体ほど公共交通機関が発達し歩行量が多くなり、結果として運動療法となっている面があります。歩道が多い歩きやすいまちでは認知症リスクが半減するほか、近隣に食料品店があれば野菜や果物の摂取頻度が多くなり、少ない環境では認知症リスクが165倍高いという調査結果もあります。

 

◆社会参加・人のつながり

 認知症リスクの一つに「うつ」があります。人との交流が多い人と週1回未満の人を比べると、交流が少ないほどうつ、認知症や要介護、死亡の割合が高くなります。趣味やスポーツなどの社会参加率においても、参加が少ない人はもの忘れが多い傾向にあります。健康を維持する上で社会参加はとても重要です。

 

 同じ運動頻度でも、1人よりグループに参加した方が要介護状態の発生リスクが低い。食事も同じで、1人で食べている人の方が死亡率は高くなっていました。1人と複数の違いは「笑い」の頻度や人とのつながりにありそうです。さらに組織内で役割を担うと認知症リスクも減ります。

 

 歩きやすいといったハード面の環境だけではなく、人とのつながりがあるかというソフト面も大切です。

 

◆健康なまちづくりは可能か

 愛知県の武豊町で、高齢者の地域交流を図る「憩いのサロン」の創設に携わりました。その後、追跡調査をするとサロンに参加した人は、参加していない人に比べて要介護認定率が約半分、認知症リスクも3割に抑えられました。

 同町の後期高齢者の要介護認定率は、2015年から20年までに約6%減少しました。介護給付費は1人当たり年間200万円程度に上りますが、武豊町では後期高齢者約264人がサービスを使わなかったとすると、給付額が55億円ほど抑制できたと推計できます。

 

◆ポストコロナ時代のゼロ次予防

 コロナでの外出自粛が今後も長引けば、高齢者の健康に影響します。第3波に合わせ、介護認定の区分変更申請が増えたという報道もありました。社会参加は健康に良いが、コロナで自粛が必要という矛盾をどうすればよいのでしょうか。

 

 ネットでも交流の効果は得られます。非対面でも交流があれば、孤立している人よりうつ状態の割合が低く、新規うつの発症もネットでの交流がない人より3割低いことが分かりました。体験した高齢者の9割がネット交流は「助けがあればできる」、7割が「続けたい」と回答しました。ネット交流する高齢者が増えて欲しいと思います。

 

 (415日、第69期同友会大学公開講座

 

こんどう・かつのり=千葉大学医学部卒。2014年から現職。国立長寿医療研究センター老年学評価研究部長を併任。