3期連続改善も楽観出来ず/2021年1―3月期景況調査
2021年05月15日
仕入れ価格の上昇、採算圧迫か
中小企業家同友会全国協議会と北海道中小企業家同友会が四半期ごとに実施している景況調査結果(2021年1―3月期)がこのほどまとまりました。全国では2291社中910社が回答。北海道では762社中226社から回答を得ました。この結果について、北海学園大学経済学部の大貝健二准教授(中小企業論)にコメントを頂きました。(DI値は特に断りのない限り前年同月比、▲はマイナス、①―④は四半期)
北海道中小企業家同友会21年第1期(1―3月)景況調査における業況判断DI(前年同期比)は、12・3㌽もの大幅な改善を示しマイナス23・6となった。しかし、その水準は低い。他方で業況水準は4・6㌽の「やや悪化」、マイナス28・0にとどまっている(図1)。このことから、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、全国に先んじて独自の緊急事態宣言を出した昨年同時期と比較して景況感は改善しているものの、依然として景況感は悪いととらえることができるだろう。また、次期見通しに関しては、今期と同様に16・9㌽の大幅な改善見通しである。同様に、主要指標である売上高、採算においても次期見通しは大幅な改善見通しとなっている。
今期の業況判断を「全国企業短期経済観測調査(短観)」と比較すると、以下のような差異がある。今期の景況感は、本調査と短観で、ともに改善しているのに対して、次期見通しに関しては、短観では悪化見通しとなっている(図2)。短観の調査時期は、本調査とほぼ同時期である。新型コロナウイルス変異株が猛威をふるい始める以前の調査であることを注意しておく必要があることは確かであるが、なぜ、本調査において、次期は「大幅に改善」する見通しになるのか、明確な理由がわからない。販売単価DIは、今期上昇を示したが、同様に仕入単価も上昇しており、両指標のギャップは埋まっていない(図3)。さらに、1人当たり売上高と販売単価DIは、ともに悪化していることも踏まえると次期見通しは「希望的観測」の感が強いのではないだろうか。
新型コロナウイルス感染症に翻弄され、ワクチン接種が一向に進まない中で経済活動を行うことの難しさ、個々の企業努力による対応も限られ閉塞感が強まっている現状、そして変異種の急拡大など、先行きが全く分からない状況がある。さらに、次期以降、仕入単価が上昇していく可能性は大いにありうる。原油価格がコロナ禍以前の水準を回復し、さらに産油国が強気に出るとの報道があるほか、中国やアメリカにおいて建材を中心に資材需要が高まりを見せていることから、グローバル規模での調達が困難になりつつあるといった見方もある。
また、今回は景況調査に付随してコロナ関連の影響調査も行われた。
図4では今年1~3月期にどのような変化が起きたかを聞いている。仕事にリモートが取り入れられ、営業にも使われだしていることがわかる。顧客が変わったという回答は50社、コロナ対応の製品やサービスを提供しているという企業は28社あった。金融機関と相談することが増えたという回答も28社あり、支援機関としても金融機関が頼られていることが伺える。
図5は、コロナ前に戻るのはいつと考えているかを聞いた。
一番多かったのは、22年中という答え(54%)。21年中はあわせて44%、23年中が21%。既に戻っているが20%、戻ることはないという回答が31%を占めた。
過日行われた景況調査分析会議では、各業界、地域の状況についても意見交換が行われたが、より多くの意見が出されたのは、景況調査回答サンプル数や、次期の経営上の力点(自由記述)の大幅な減少に関してである。景況調査の傾向として、景気が悪化すれば回答サンプル数が増え、改善すると減るといったことがある。
景況調査を意味あるものにするためには、一定程度のサンプル数を確保しながら継続することが何よりも重要である。次回以降、新たな取り組みを展開している企業の紹介など、景況調査結果と連動させながら、行ってみたいと考えている。