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【講演録】「4月から中小企業も同一労働同一賃金」社会保険労務士法人 熊谷・八重﨑事務所 八重﨑聖子氏(札幌支部会員)

2021年04月15日

 正社員と非正規労働者(パートタイマー・契約社員など)との間の不合理な待遇の差をなくし、どのような雇用形態を選択しても待遇に納得して働き続けることができるよう導入されたのが「同一労働同一賃金」です。その考え方が示されたパートタイム・有期雇用労働法は2020年4月1日に施行され、今年4月1日から中小企業にも適用されました。基本的な考え方と実務対応のポイントを解説します。

 

 パートタイム・有期雇用労働法のポイントは、「不合理な待遇差の禁止」と「待遇に関する説明義務」です。

 

■不合理な待遇差の禁止

 正社員と非正規労働者との待遇の違いが不合理かどうかは、個々の待遇ごとに、その性質・目的を考慮して判断します。「待遇」とは、基本給や諸手当、賞与等の賃金のほか、休暇や福利厚生を含めた待遇全般をいいます。正社員と非正規労働者との間で①職務内容②職務内容・配置の変更の範囲(人事異動や転勤の有無、範囲)などに違いがあるかどうか比較し、違いがあれば、その違いに応じて非正規労働者の待遇を決め(均衡待遇)、いずれも同じであれば、待遇に差をつけてはならない(均等待遇)ということになります。

 

 「同じ仕事をしていれば同じ賃金にしなくてはならない」と誤解されているケースがありますが、「職務の内容」とは、「業務内容と責任の程度」をいい、例えば正社員と非正規労働者が同じ業務をしていたとしても、部下に指揮命令を行う権限、トラブル発生時の対応が求められることなど、責任の程度が違えば、「職務内容」は異なると理解され、その違いに応じた待遇差は許容されることになります。

 

 具体的な待遇ごとの考え方が示された厚生労働省のガイドラインによると、例えば基本給を労働者の能力又は経験に応じて支給するのであれば、正社員と同一の能力と経験を有する非正規労働者に対して、能力又は経験に応じた部分については同一の支給を、一定の相違がある場合はその相違に応じた基本給を支給しなければなりません。

 

 また、賞与については、会社の業績等への貢献に応じて支給する場合、正社員と同じ貢献である非正規労働者には、貢献に応じた部分については同じ賞与を支給し、貢献に違いがある場合には、その違いに応じた支給をしなければなりません。

 

 その他、職務との関連性では説明がしづらい「家族手当」「住宅手当」「燃料手当」等については、その手当の趣旨・目的は何か、非正規労働者に支給しない(または支給額に差がある)ことについて客観的、具体的な理由を説明できるかを検証し、その手当の必要性、支給のあり方を判断していくことになります。

 

■待遇に関する説明義務

 非正規労働者を雇い入れたときと、非正規労働者から説明の求めがあったときに、待遇差の内容や理由について説明することが事業主の義務となったことも重要なポイントです。質問を受けたときに答えられるよう、事前に準備しておきましょう。

 

 このように同一労働同一賃金への対応は、個々の待遇ごとの検証となり、賃金の改定が伴うため、時間がかかります。これから取り組む場合は、①雇用区分の整理(正社員、パート、契約社員等)②待遇の洗い出し③待遇差の確認④待遇差の根拠・妥当性の検討⑤待遇差が妥当ではない場合の対応策の検討、待遇差の是正―という流れで計画的に進めてください。