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【わが人生 わが経営 118】知床グランドホテル 代表取締役会長 桑島繁行さん(71)(オホーツク支部)

 

宿泊客満足度を追求 従業員との信頼関係重視

 

 桑島さんは、1950(昭和25)年に斜里町で5人兄弟の長男として生まれます。両親はもともと農業を営んでいましたが、桑島さんが小学校5年生の60(昭和35)年、父・宣一さんが部屋数5室を持つ桑島旅館を開業しました。

 

 高校は網走南ヶ丘高に進学。高校ではバンド活動でベースを担当する傍らクラスの委員長も務め、持ち前の行動力でいつもクラスの中心にいました。「愉快な友達が多かった。人生で戻れるとしたら高校時代を選びたい」と当時を懐かしみます。

 

 税理士の仕事に興味を持っていましたが、父から何度も「帰ってこい」という言葉を掛けられ、高校卒業後は故郷に戻ります。しかしどうしても勉強を諦めきれず、父親と約束を交わし観光ホテル桑島に入社すると同時に法政大学通信教育経済学部に入学しました。

 

 当時の日本は、高度経済成長の真っ只中。「心とお金にゆとりが生まれた時代。だからこそ宿は住宅と差別化を図る必要が出てきた」と振り返ります。さらに入社した翌70(昭和45)年には、歌手・加藤登紀子さんが歌う『知床旅情』がヒット。大学生を中心に多くの観光客が知床に訪れました。当時の部屋数は55室、職員は夏季雇用の18人程度と少なく、宿泊客の2倍以上を毎日断らなければならないほど混雑しました。精算業務や予約受付のほかにも経理など、早朝から夜遅くまで業務をこなします。「仕事ってこんなに忙しいんだ」と身に染みて感じたそうです。

 

 仕事にいそしむ傍ら、勉学にも励みました。夏はかき入れ時のため、勉強を始めるのはいつも9月末の客足が落ち着いた頃。仕事を終えて夜の10時過ぎに帰宅すると、テストの受験資格を得るためにレポート執筆に取りかかります。そして受験資格を得るとテストを受けるために札幌や釧路のほか、遠くは長万部まで足を運びました。

 

 ホテル内も比較的静かな正月明けから3月中旬までは、東京へ行き大学のスクーリングに通います。しかし、当時は学生運動が活発で教室はロックアウトが多く、授業を受けられない日も少なくありませんでした。殺伐とした中、心を癒やしてくれたのは母から送られてくる餅やサケ。ガスが使用できない下宿のため、電気ストーブなどを使って工夫しながら温めたといいます。仲間とともに食べたふるさとの味は、今でも思い出に残っています。

 

 仕事と勉学の両立に励んだ5年間。忙しく苦しい時期でしたが「だからこそ絆の大切さを学んだ」と振り返ります。同じ志を持った仲間同士が勉強を教え合ったり、スクーリングに出ている時は家族が支えてくれたりと、たくさんの人とのつながりを実感しました。大学卒業後も人間関係の大切さについて、肌で感じることがありました。それは従業員から「お父さん」と呼ばれていた父の後ろ姿です。先代について「従業員や地域の人たちとのつながりを大切にしてきた人だった」と語ります。

 

 取締役支配人や専務取締役などを経て、93(平成5)年に代表取締役社長に就任しました。創業者の父から受け継ぎ、拡大路線に向かって行った時代。団体客が知床に訪れる中、その時のニーズに合わせて客室は78室から140室、多い時は総計200室ほど設けました。そのような中でも先代に倣って従業員との信頼関係を築きつつ、ホテルマンとしての教育にも力を入れました。

 

 リゾートホテル業とは、「お客様がチェックインからアウトまでの間、どれほど満足してもらえるかを追求するもの」と桑島さん。食事、入浴、寝室などを気持ちよく利用してもらうためには従業員との協力と教育が不可欠だと言います。特に新卒で入社した社員について、「礼儀作法を一から教育する。人によってはうるさいと思うかもしれないが、きれいなあいさつや行動を身につけさせてあげたい」と社員教育に尽力しました。

 

 しかし近年、ITの出現と発展により人の手から機械化に変わる作業が増えたと言います。また、それに合わせて団体客から個人客に傾向が変化したとも。「インターネットによって行きたい場所などを検索できるようになり、旅行の目的がはっきりするようになった」と指摘。その上でこれからのホテル業については、「時代のニーズに合わせて、常に変化していかなければならない」と語ります。

 

 同友会を知ったのは、叔父の桑島貫さんが斜里ブロックに所属していたことがきっかけ。2002(平成14)年に父・宣一さんから会員を引き継ぎました。異業種の人たちとの交流に刺激を受けると言います。

 

くわじま・しげゆき 1950年2月11日、斜里町出身。代表取締役社長を経て、2017年から現職。

知床グランドホテル=本社・斜里町。代表取締役会長を兼務する知床プリンスホテルと北こぶしリゾートを形成。ホテル3施設を運営。