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【講演録】ファンビジネス戦略と勝利以外の魅力創出 レバンガ北海道代表取締役CEO 横田 陽氏が講演

2020年11月15日

 

集客支える仲間づくり

 

 スポーツビジネスも他のビジネスと同様に、企業理念の実現を目指して取り組んでいると思います。レバンガ北海道ではビジョン達成への手段としてチームがあります。チームのミッションは勝利を追い求めることですが、勝利がビジョンの「人を笑顔にする」につながるので、勝てるチームづくりは大切です。しかし、われわれは強さに左右されない経営も進めてきました。

 

 元々、スポーツチームの価値は勝利至上主義でした。一方、レバンガの魅力を調べると「選手との距離感」「エンターテインメント性」などが上位に入るのに対し、一番低いのは「チームの強さ」。成績から見ると当然ですが、チームの順位とは別観点でファンを楽しませていると言うことです。Bリーグのトップリーグ・B1で、昨シーズンの平均入場者数ランキングでレバンガは18チーム中4位でした。上位3チームは優勝を狙える強豪チームです。勝つことだけがクラブの価値ではないことを実証できています。

 

 ただ、勝てないのになぜ評価されるのか。それは選手と協力した数多くの企画に加え、年間何千人にも上る子どもたちとの触れ合いが大きな要因です。レバンガの選手は知名度に関係なく、平等に学校訪問します。その後、生徒たちが試合で応援するのは、試合で活躍した選手ではなく、学校に来て直接触れ合った選手です。ファンをつくるきっかけは知ってもらうことですが、試合だけでは十分ではありません。こちらから機会を増やすことで、試合以外でもファンをつくることができます。勝敗だけではない部分を、クラブ一丸となって模索しています。

 

 試合の来場動機を掘り下げると、〝誘われたから〟にたどり着きます。新規の客が試合を観戦するまでには多くのパワーが必要ですが、それを一瞬で飛び越えるのが誘われることです。ファンビジネスにおいて0から1を生み出すことは重要で、このパワーをつくるのがコアなファンであり、われわれはロイヤルカスタマーと呼んでいます。彼らは〝ファン〟から〝仲間〟となってクラブを支えてくれます。ですから、われわれは彼らが喜ぶサービスの構築に取り組んでいます。

 

 オンラインサロンの開設もその一つで、ロイヤルカスタマーとのつながりをより深めることが目的です。月額1000円で選手のオフショット、取材前後のメイキングなどを発信しています。この中では運営マニュアルなど、われわれが無価値と思っていたものに特別感があると喜ばれています。

 

 ファンビジネスの集客は、ロイヤルカスタマーが支えています。モノを販売する企業でも、2割の顧客が売り上げの8割を支えていると言います。スポーツビジネスもその2割を増やしていくことが、全体の母数を広げることになります。ファンづくりではなく、クラブに共感してくれる仲間づくりが最も重要なのです。

 

よこた・あきら=1976年生まれ、釧路市出身。2007年に北海道初のプロバスケットボールチーム「レラカムイ北海道」の運営会社に入社。14年からは「レバンガ北海道」で事業統括部長などを経て、16年9月から現職。

 

 (928日、札幌支部IT経営部会&広報・情報委員会公開例会にて)