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【講演録】「私はこうして「生産者」から「経営者」になった」(大野ファーム. 大野泰裕社長)

2020年09月15日

 とかち支部は720日に支部例会を開催しました。大野ファーム.大野泰裕社長(とかち支部副支部長)が「私はこうして「生産者」から「経営者」になった~健康な人づくり、土づくり、牛づくりを目指して~」をテーマに報告しました。概要を紹介します。

 


 

 

5つの課題を常に意識

 

 当社はホルスタイン・F1交雑・和牛の3種類の肉牛約4000頭を肥育生産しています。また、道産飼料にこだわり、牧草など自家生産、自社で飼料工場も持っています。バイオガスプラントやソーラー発電、農場HACCP、肉牛生産では国内初の畜産JGAPを取得するなど、牛に関わるビジネスに広く取り組んでいます。畜産農家を身近に感じてほしいと牧場内にカフェ「COWCOW Village」もオープンしました。

 

 私ははじめ農業が嫌いで継ぐ気持ちはあまりありませんでしたので、学生時代は札幌で普通に就活をしました。しかし、農家の長男であることやサラリーマンとして過ごし続けることに疑問を感じて農家になりました。その際、どうせやるなら法人化してしっかり大きくしようと志しました。

 

 生産者から経営者に変わるにあたってまず苦労したのは雇用でした。約20年前、よくわからないまま地元で中途求人を始めましたが、応募も少なく、求職者のレベルにも愕然としました。このままではいけないと腹を括り、50万円かけて全国求人しました。すると、本州以南の多くの人が北海道・スローライフに憧れを持っているとわかり、多くの人材を雇用することが出来ました。

 

 そこから組織づくりが始まりました。折角優秀な社員が入社してくれましたが、自分に農業はわかっても組織づくりのことはわからず、失敗を重ねてしまいました。全て社長の責任です。失敗から学び、最近ようやく組織が出来はじめ、どういう人を採用したら良いかが分かってきました。新卒採用も始め、人を育てる方針に転換し、現在は社員の平均年齢は29歳です。今では新卒で採用した社員が、経営幹部として会社組織の発展に大きく力を発揮してくれています。

 

 農業は生産レベルが下がれば経営もうまくいきません。規模が大きくなるほど、経営者の目が届かなくなりがちです。その中でしっかり組織づくりが出来ないと生産レベルが落ちます。何度も苦労し、綱渡りの時期を経て、この数年でようやく経営基盤が整ってきました。

 

 また、一般企業と大きく異なるのが資金面です。農業では農協を活用するのが一般的なため、市中銀行と初めて取引する際には緊張しました。畜産は仕入れから出荷まで年単位で時間がかかり、収入と支出の時期に大きな差があります。その間の安定した資金を農協に頼らず調達出来たことは大きな一歩になりました。

 

 そして販路です。これまでの4つの課題全てを兼ね備えていなければ良い生産物を作ることも出来ず、販路開拓にもつながりません。これが出来てこそ経営者と言えるのではないかと考えています。私は今でもこの5つの課題(雇用・組織・規模・資金・販路)の重要性を常々自分に問い続けています。

 

会社概要=本社・芽室町。肉牛の肥育生産やファームレストラン。資本金4500万円、総耕地面積140㌶。大野氏は1964年生まれ。