【講演録】コロナ大不況はいつまで続くか(立教大学名誉教授 山口義行氏)
2020年07月15日
コロナ大不況はいつまで続くか
立教大学名誉教授 山口 義行 氏
(6月19日、緊急WEBセミナーより。文責は編集部にあります)
新型コロナウイルス以前の景気に、どの程度の期間で戻るでしょうか。緊急事態の下で、中小企業は政策金融公庫などから借り入れを行いました。向こう半年分の資金繰り手当てをした企業が多かったかと思います。しかし、半年で景気が戻らなければどうなるでしょう。経済活動は再開しましたが、V字回復は難しいと考える人が多くなってきました。理由は3つあります。
一つは、規制が解除されても、多くの店や宿泊施設などは自ら客の入りを制限して営業を再開せざるを得ないことです。例えば店内の椅子を半分に減らすといった安全対策をとることで、満席になっても売り上げは半分にしかなりません。これまでは〝休業〟に対して雇用調整助成金などがありましたが、〝再開〟では支援もなくなります。
二つ目は、当分、インバウンドの復活が期待できないことです。〝当分〟とは、日経新聞の関連企業調査で〝1年以上〟との回答が半数を超えました。うまくいっても来夏の東京五輪直前ということです。北海道は特にインバウンド需要に依存していましたので、今後悩む企業は多いのではないでしょうか。
三つ目は、海外経済の低迷です。日本の輸出は増えず、製造業の復活を難しくしています。中国はコロナの影響から回復しつつあるように見えますが、輸出が伸びていません。リーマンショック時は、世界中から中国にお金と企業が集まり、その成長に引っ張られて日本経済も回復しました。今回はむしろ多くの企業が「中国に依存しすぎてはダメだ」と考えています。また、日本の5月の輸出はマイナス28・3%と大きく落ち込み、米国向けは50・6%の大幅減。このうち主力の自動車は78・9%減と、前年の2、3割しか仕事がないという状態です。
来春になってもこのような状況が続けば、雇用を守れない企業が増えることも懸念されます。報道では飲食や小売り、サービス業への影響が目立ちますが、雇用面の影響は製造業が最も多く、さらに今後建設業へと拡大する恐れもないとはいえません。
岡三証券の調査によると、中小企業は売り上げが14%落ち込むと、赤字に陥るそうです。売り上げ3割減というような状況が続けば、ほとんどの企業は債務超過になってしまいます。
新たな問題として、再び資金の借り入れが必要となる可能性があります。現在は国が金利を負担するため、銀行はどんどん貸し付けていますが、次に借り入れる際は自前で貸すことになります。果たして、債務超過の企業に銀行は追加融資をしてくれるでしょうか。
そこで私は、借入金以外の長期資金調達として、「永久劣後ローン」を提唱しました。「劣後」とは、返済の優先順位が低いという意味。通常の融資と違い、劣後ローンは貸借対照表では負債に入りますが、資本としてカウントされます。「配当」にあたる金利は受け取るけれど、出資同様「元金を返せとはいわない」というものです。これを広げるために、国が永久劣後ローンの買取機構をつくって支援するというプランを考えました。
第二次補正予算でも、資本増強支援に1兆2442億円が組まれました。中小企業経営者の皆さんが声をあげていくと実現できると考えます。
いずれ戻る時は必ずきます。しかし元の場所ではなく、違う地点へ戻ることに注意が必要です。経営者には、①読む力②問う力③つなぐ力が求められているのです。