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【わが人生わが経営 111】職人工房(株) 代表取締役 一関 脩さん(73)(札幌支部)

2020年07月15日

 

10年かけた事業承継 アフターサービスを重視

 

いちのせき・おさむ 1947年6月1日、秋田県生まれ。73年に北海道フキを創業し、74年に組織変更。2012年まで代表取締役を務める。

 

 職人工房=1999年設立、2002年に現社名へ変更・法人登記。合鍵、印鑑、名刺、靴修理など生活支援サービス・メンテナンス。

 

 自身が経営者として独立の道を歩んできたため、社員や周囲の独立も応援する姿勢です。一方で事業を始めた責任として顧客、社員、地域のためにも後世へ引き継ぐことが大切と考え、企業の〝事業承継〟を重視してきました。

 

 一関さんは1947(昭和22)年、秋田県五城目町で5人兄弟の次男に生まれます。農家を営む忙しい両親に代わり、面倒を見てくれた祖父・宇一さんから「家は長男が継ぎ、次男はいずれ出て行くもの」と教えられます。高校入学後は家業の手伝いもあって、バイクと耕運機の免許を取得したことで整備に詳しくなります。これが進路を考える際、「機械いじりは誰にも負けない、腕次第でお金を稼ぐことができる」と、経営者を志すことにつながりました。

 

 北海道自動車短期大学(当時)を卒業し、68(昭和43)年に都内の自動車販売会社に入社。ただ、入社後3年で独立を決めていたため退社したいことを伝えると、面接時に会社からは「一人前となる3年目から会社は元を取れるんだ」と言われ、それなら3年以内に会社に元を取って貰えるようにすると公言し、新人賞を取ると宣言。名刺1枚で社長に会える営業は楽しくもありましたが、「本当は赤面症で人と会う営業が大嫌いだった」と一関さん。それでも志を遂げる為、寝る間も惜しんで積極的に人に会い、売り上げを伸ばします。そして宣言通り、新人賞を獲得。翌年は金バッチ、次の年も金バッチと連続して箔を付けました。

 

 お世話になった会社への恩義から、予定を延長して72(昭和47)年に退社。会社員時代に顧客だったゴトウ(当時)の後藤茂社長とのご縁で、73(昭和48)年に札幌で鍵の専門卸「北海道フキ」を創業します。しかし、当時は道内に鍵の専門卸店はなかったものの、全く売れません。「営業はそれなりに自負があり、売りたい熱意もあったが信用がありませんでした」。そして、〝営業はこうじゃなきゃ〟ととらわれているのではだめだと考え、仕事や商品は時代に合った変化が必要と気付きます。

 

 当時の合鍵業は売りっぱなしで、アフターフォローがないことに注目。修理や調整、技術指導を無償で行ったところ、お客さまの支持につながり注文が増えていきます。その後はアフターサービスとメンテナンスを重視したサービスを徹底し、鍵関連商品も増やしつつ、カードロック、防犯ベルといった新たな鍵分野にも進出します。現在は合鍵製造、金物・素材卸、建築資材販売の3事業を柱に展開。関連企業として、79(昭和54)年に鍵紛失、防犯設備関連を扱う札幌キーセンターを設立し、フキロックサービス、イチカンビルテックと次々と分社しました。

 

 自身は2012(平成24)年、北海道フキを長男・修平氏に事業承継。第2創業は対面販売形式の職人工房を立ち上げ、99(平成11)年に1号店を開業。現在は札幌市内5店舗、岩見沢市内と青森県に各1店舗を展開しますが、今年6月に全店舗を独立させました。

 

 「今後は経営者として、1365日、一日24時間、会社のことをひたすら考えて貰おう。私はその覚悟を持ったら事業は成功すると思います」と心構えを説きます。新型コロナウイルスの影響で厳しい現状ではあるものの、だからこそ経営者として〝変革〟が求められ、今後の転機にもつながるとも述べます。ただ、「まだまだ経験不足な点が多い新事業社長を陰ながら23年フォローできれば」と見守っていく考えです。

 

 同友会には、81(昭和56)年に入会。未知の会の立ち上げ、事業承継等第2創業を学び合う「無二の会」を07(平成19)年に発足し、初代代表世話人を務めました。当初は60歳以上が対象でしたが、今は50歳以上へ門戸を広げ、多くの会員が参加しています。また、修平氏とともに地区会例会や支部主催のセミナーで事業承継の経験を報告するなど、会員企業の学びにも広く貢献しています。

 

 一関さんは貸借対照表(バランスシート)を社員らに公開しています。「貸借対照表はいわば経営者の通信簿。そこに不透明な部分があれば、事業承継したくても受け入れて貰い辛いものです。内容を見せて納得してもらうことで承継する側も覚悟を持って引き継いでくれる」とアドバイス。

 

 しかし、自身の経験から「事業承継は創業よりも難しいものと考え、前後に5年ずつ、10年という期間は必要ではないか」とも指摘。最も大切なことは「自分はどうしていきたいのか、今後のことを常に思い描き説いて行くことが必要」と、改めて経営者としての覚悟を訴えます。