雇用調整助成金の活用についてー社会保険労務士事務所テラス所長 倉 雅彦氏
2020年06月15日
経営者であれば、従業員の生活は何としても守りたいもの。新型コロナウイルスの影響で事業を休業せざるを得なくなったときに、従業員に支給する休業手当を助成してくれるのが、雇用調整助成金です。
雇用調整助成金の特例では、
【ポイント1】新型コロナウイルス感染症の影響により、
【ポイント2】事業活動の縮小を余儀なくされた場合に、
【ポイント3】その雇用する対象労働者の雇用の維持を図るために、
労使間の協定に基づき雇用調整(休業)を実施する事業主が支給対象となります。
中でも特に重要なのは「休業」の性質です。休業とは、労働者がその事業所において、所定労働日に働く意思と能力があるにもかかわらず労働することができない状態です。したがって、本人の意思により年次有給休暇を取得している場合や、新型コロナウイルスに感染した場合等の欠勤・病気休暇などは、労働の意思または能力を喪失しているため、本助成金の支給対象となりません。
それでは、各ポイントについてひとつずつ解説します。
【ポイント1】新型コロナウイルス感染症の影響によること
「新型コロナウイルス感染症の影響」とは、以下のような理由により経営環境が悪化し、事業活動が縮小していることをいいます。①行政からの営業自粛要請を受け、自主的に休業を行ったことにより売上が減少した。②観光客のキャンセルが相次いだことにより、客数が減り売上が減少した、などです。
【ポイント2】事業活動の縮小を余儀なくされていること
「事業活動の縮小」とは、売上高または生産量などの事業活動を示す指標の最近1か月間(計画届を提出する月の前月など)の値が前年同月比5%以上減少していることです。
【ポイント3】雇用の維持を図るために労使間の協定に基づき雇用調整(休業)を実施していること
雇用調整(休業)の実施について労使間で事前に協定し、その決定に沿って雇用調整を実施する必要があります。労使間の協定は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、ない場合には労働者の過半数を代表する者との間で書面により行う必要があります。
なお、この雇用調整助成金の「対象労働者」は、「雇用保険適用事業主」に雇用されている雇用保険被保険者です。ただし、雇用保険被保険者以外の方は、「緊急雇用安定助成金」の支給対象となる場合があります。
特例として、2020年5月19日から計画届(2回目以降のものを含む)の提出は不要になり、支給申請時に必要書類を提出することに変わりました。また更に小規模事業主は簡素化されました。
具体的な手続きなど制度をわかりやすく解説した「雇用調整助成金ガイドブック簡易版」または「小規模事業主用のマニュアル」がありますので、ぜひ、そちらもご確認ください。
今後の動きとして、雇用調整助成金の申請手続きがWEBで行えるようになり、一人当たり8330円の支給上限が1万5000円に引き上げられる、といった既存の支援策拡充など今後の動向に注意してください。
(この原稿は5月28日時点の情報をもとに執筆しています)
【執筆者】
社会保険労務士事務所テラス所長
倉 雅彦 氏
(札幌支部)