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中小企業救済へ支援策提案/立教大学名誉教授 山口 義行氏

2020年05月15日

立教大学 名誉教授 山口 義行 氏

 

返済不要の「永久劣後ローン」実施を

 

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴って瀕死状態に陥っている中小企業をどう救うかが喫緊の課題になっています。そうした中小企業への支援策を提案します。その施策とは、『永久劣後ローン』。返さなくてもいいお金、すなわち「資本」を中小企業に注入するという施策です。

 

 国は、「実質」無利子・無担保の特別貸付を用意し、資金繰り支援を行っています。しかし、いくら無利子とはいえ、多くはすでに多額の借金を背負っていますし、ウイルス禍による景気低迷がいつまで続くか分からないと尻込みする企業も少なくありません。

 

 また、売り上げの落ちた中小企業に、200万円の持続化給付金が支給されることになりましたが、生き残るためには1000万円単位の資金が必要という会社も多いはず。

 

 そんな企業への支援策は一つしかありません。「返さなくてもいいお金」、すなわち「資本」を中小企業に注入することです。民間金融機関が「永久劣後ローン」を実行し、希望する金融機関からは、政府が「買取機構」をつくって債権を買い取るという仕組みはいかがでしょうか。

 

 「永久劣後ローン」。聞き慣れない言葉ですが、「劣後」とは、返済の優先順位が低いという意味。会社が解散になった場合、「他の借金を先に支払って、お金が残っていたら返して下さい」というローンです。「永久」とは、「返済期の定めがない」ということ。言い換えれば「永久に借りたままでいい」、つまりは「返さなくていい借金」です。

 

 いわば金融機関が優先株を購入して出資するようなもので、「配当」にあたる金利は受け取るけれど、出資同様「元金を返せとはいわない」。今回は緊急支援策なので「永久劣後ローン」の金利は当面はゼロ。経済が正常に戻ったら少しずつ金利を引き上げていくというやり方にすべきと考えます。

 

 金融機関からすれば、「永久劣後ローン」はひとたび実行すれば「永久」に金利が入ってくるローンです。今回はこのローンをできるだけ多くの中小企業に対して実行してもらうため、政府と日銀の共同出資で「買取機構」をつくることを呼び掛けます。

 

 借り手のモラルハザードを心配する向きもあるでしょうが、対象は金融機関が日頃から付き合いのある中小企業とすれば、問題ないでしょう。

 

 実はこのアイデアの提唱者は、三井住友信託銀行名誉顧問の高橋温氏です。高橋氏は本年43日の日本経済新聞で、「政府系金融機関が地域金融機関の紹介・推薦に基づいて永久劣後ローンを実行する」方式と、「地域金融機関が実行した永久劣後ローン債権を国の特別勘定が買い取る方式」の二通りを提唱されています。

 

 「全国186万社の資本金1000万円未満の中小企業では、売上高が三分の二に落ち込むと23兆円強もの損失が発生する。この状況で中小企業が最低限の経営体力を維持するためには、5兆円規模の永久劣後ローンを用意する必要がある」。優秀な金融実務家が提唱したこの案は、十分に実現可能な施策といえます。

 

 あとは、中小企業経営者ら現場の声をどれだけ上げるかです。「金融アセスメント法」の制定を呼び掛けた人間として、同友会の皆さんが声をあげてくれることを期待します。

 

 この提言を実現すべく、スモールサンホームページに、「賛同します」ボタンを設置して賛同者の「数」の力で、政府を動かしたいと呼び掛けています。北海道同友会の皆様もぜひよろしくお願いします。

 

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