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【わが人生わが経営 109】きもの舎けん美㈱ 代表取締役 星 勝彦さん(78)(札幌支部)

2020年05月15日

 

〝つながり〟こそ大事 時代に合わせ臨機応変で

 

ほし・かつひこ 1942年3月20日、江別市出身。金市館(当時)での勤務を経て独立。

きもの舎けん美=本社・江別市。呉服、宝飾、健康関連商品などを取り扱う。1985年に前身会社を設立し、2000年に現社名へ変更。

 

 「伝統商品の呉服、地域への貢献、同友会活動。人生を振り返ってみると、何事も一貫して〝つながり〟を大切にしてきました」

 

 星さんは1942(昭和17)年、6人兄弟の次男として江別市に生まれます。小中高を市内で過ごした後は、兄弟も多かったことから就職を決意。叔父の紹介で、昭和時代に札幌のデパートとして市民に愛された、金市館(当時)に勤めることとなりました。

 

 入社して2年目、会社が室蘭に出店することとなり、新店舗の呉服・寝具売り場の責任者を任されることに。19歳という若さで周りの従業員も女性ばかり。苦労もあったはずですが、「自分が今居る地域や環境に溶け込むことが好きな性格で、その街にどのような店やお客さまがいるかを調べるのは楽しかった」と振り返ります。

 

 室蘭での出店の経験を生かして、その後も札幌、岩見沢、釧路で新規出店する際には、各地で売り場や店舗全体の責任者を務め、常に新たな場所で店のスタートと発展を支えてきました。

 

 伝統商品で高価な呉服は、「顧客一人一人との〝つながり〟が大事」と、星さんは説きます。また、お客さまにとって呉服は「着て楽しむ」ものであり、販売だけでなく「着ていく場所」の提供も合わせて必要だとし、催事の開催も積極的に取り入れました。

 

 ある時、会社全体の売り上げを多く占めていた岩見沢店が落ち込んできたことから、星さんが呼び戻されます。購入する頻度も多く客層も幅広い肌着などの軽衣料と違い、重衣料の呉服はリピーターとして継続購入してくれるいわば〝お得意さん〟が対象。星さんはお得意さんとのつながりが切れてしまったことが要因と気付きます。

 

 再びつながりを取り戻そうと奔走する中、顧客でもあった店舗近くの日本料理店が催事会場を提供してくれることとなり、「これまで大切にしてきた〝つながり〟の重要性をあらためて実感した」と語ります。加えて、従業員の人材育成にも力を入れていかなければならないと決意。朝礼に力を入れ、日々の仕事の中で気付いたことやお客さまのことを細かく伝えるなど意識の共有を図り、成長につなげていきました。

 

 星さんは、地域とのつながりも重視します。当時、岩見沢の神社で開かれる祭りには大勢の人が集まるので、店舗前の4条通沿いにもにぎわいをつくりたいと考えました。知り合いの経営者の力を借り、世界一の大臼を使った餅つきイベントを構想。企画を進める中で、さらに人のつながりや縁によって協力者が増えていき、街を代表する恒例行事『ふるさと百餅祭り』の立ち上げに至りました。

 

 その後、札幌の金市館へと戻りますが、同社は89(平成元)年に大丸スーパーと合併し、ラルズ(現・アークス)が誕生。一方で時代の流れも受け、掛け売りが基本で在庫の保有も多い呉服部門の成績は厳しくなっていきます。そこで一念発起し、92(平成4)年に50歳で同社を退職。縁あって友人2人と設立した会社で、星さんは呉服事業を展開します。

 

 サラリーマン時代の経験から、どの会社経営も時代によって波があると考え、従業員は雇わず1人経営の道を決意。また、前の職場で「在庫は抱えるな」とアドバイスされたことから、問屋による展示会販売の形態とし、規模によって札幌のホテルや自宅に併設して建てた事務所などを使い分けています。

 

 一方で、時代の変化に合わせた事業へ柔軟に対応していきます。呉服業界では客層の高齢化が進んだことから、健康関連商品に参入するメーカーが増加。星さんもこの変化を見逃さず、「臨機応変に変えられる環境をつくることが大事」として、即座に展示会場に健康コーナーを設けるなどしました。現在は呉服、紳士服、宝飾、健康関連と幅広い取り扱いで、顧客一人一人に寄り添ったサービスを徹底しています。

 

 同友会には、1995(平成7)年に入会しました。特に江別地区会長時代が思い出深く、事務局員と協力して会員増強に奔走したほか、「異業種懇親会」「500円の会」「WEえべつ祭り」などのイベントを新たに企画し、会員の交流を深めるのに一役買いました。

 

 「交流によって互いの会社のことや商品を知ることが、自分の会社の発展にもつながる」と星さん。「同友会活動では会員同士が知り合い、交流につながることが大事。そして同友会でできたつながりは簡単には途切れない」と、若い経営者たちには交流を通じた勉強により一層励んでほしいとアドバイスします。