新型コロナ対応「借入元金支払い猶予で『止血』を」
2020年03月25日
30年余にわたり税理士業務などを通じて、多くの事業再生の相談に乗ってきた中村健一郎氏(宮崎同友会創立メンバー)が、新型コロナウイルス感染症の拡大による事業への影響の対策について、中小企業家同友会全国協議会に寄稿されました。ポイントを抜粋して掲載いたします。
※本文内で、「2カ月間の資金収支見込をつかむこと」とありますが、情勢を鑑み、「3カ月間」とされることをお勧めいたします。
※本寄稿は、3月25日の中小企業家しんぶん(中小企業家同友会全国協議会発行)に掲載されたものを転載したものです。記事本文はこちら。
(1)向こう2カ月間の資金収支見込を即時につかむ
1カ月遅れの月次決算表や経理担当者任せでは間に合いません。また、経営者自身の勘だけではブレます。下記の7つの手法で、向こう2カ月間の資金収支見込みを、即座に算定できますのでお試しください。
①預金残高を概算で把握 ②月平均の(人件費+物件費=固定費)を把握 ③ ①÷②=手元預金の対粗利益額比率を算定 (通常は、1カ月分は下限、2カ月分は良好、3カ月分は優良で、コロナ禍で売上が激減すると、3カ月分でも危険です)
④向こう2カ月間の粗利益額の予想額算定=(月商―月仕入・材料費・外注費=月粗利益額)×2カ月分 ⑤運転資金の収支予想額=向こう2カ月間の売掛金回収可能額+在庫換金削減可能額―買掛金・支払手形等の要支払額 ⑥向こう2カ月間の借入金等の要返済額
⑦向こう2カ月間の資金収支計算: ①―(②×2)+④+⑤―⑥=2カ月後の預金残高予想額 |
(2)打てる手立ては、即、尽くしましょう!
①以上の概算値(2カ月後の預金残高予想額)をはじき、銀行へ証書借入金の元金停止策と新規融資策を相談
②返済期間のない当座貸越枠活用・5年後一括返済借入金制度等の相談
③役員報酬は、生活費必要額の一・五倍まで削減
④不要不急の資産の早期処分換金
⑤支払いサイトを延ばすお願いが可能な取引先に相談(十日間の支払いサイト延期で、月払いの三割近くの真水資金を確保できます)
⑥雇用調整助成金等の手続き
⑦上記の手立てでも資金ショートならば、新規借入増を銀行と保証協会へ依頼
⑧給与カットは厳禁、リストラは最終策です。そうならないよう社員の協力を得ましょう
⑨信販キャッシング・闇金・融通手形等は厳禁
⑩友人・知人・親戚等からお金を借りまくることも避けましょう
(3)銀行には、毎月の借入元金支払猶予での止血策と新規融資の両策を相談しましょう。
新規借入増は、先々の毎月の元金返済額と支払利息などが増加します。毎月の支払利息のみを払い、既存借入金の元金返済猶予ならば銀行の損益への影響は最小限で済みます。
当社顧問先の多店舗展開している飲食関連企業は、3月初めの相談で4日後には、向こう1年間、月数百万円の元金返済猶予OKの回答を2行からいただきました。
(4)関係官庁にはコロナ禍企業への借入元金支払猶予の決断をした銀行を支援するよう声を上げましょう
無利息ではあっても新規融資制度創設の政府方針では、民間銀行が「政府系金融機関での新規融資制度を利用して、当行には返済してください」という動きになりますので、リーマンショック時と同様に中小企業の借入元金支払猶予を金融機関に促す施策を実施するよう声をあげましょう。
(2020年3月25日 中小企業家しんぶんより抜粋)