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【講演録】肩書を取ったら私には何が残る?(とかち支部2月例会)

2020年03月15日

 

人間尊重の経営を目指す~平和園 代表取締役 新田 隆教氏

 

◆私の原点

 

 当社は焼き肉レストランを十勝に6店舗、札幌に3店舗展開しています。

 

 私は全く目が見えません。二十数年前から難病を患い、視野が狭くなり視力が落ちていき、社長になって半年ほどで失明しました。私は長く病と闘う中で、戦いは何も生まないと痛感しました。それが世界平和の思いへつながっています。平和は1人では生まれません。人とのつながりをよくすることだと思います。

 

 私は目の病を患ってから入社したため、現場に入りませんでした。現場主義の社風のため、現場社員とのギャップに苦しみ、転職すら考えました。

 

 そんな私の現在があるのは3つのきっかけがありました。まずは大きな社内アクシデント。お客さまから直接怒られて中途半端な自分自身がいることに気付かされました。その後、東日本大震災が起きます。テレビで現地を見て、精いっぱい生きなければと思いました。

 

 最後は妻にキレてしまったこと。その頃は自分本位で妻の気持ちを分かろうとしていませんでした。その時に両親、現場社員の気持ちを本当に分かろうとしていたか、ハッとさせられました。

 

◆本当の親孝行

 

 覚悟を決め、2013年に社長に就任しました。当時の私は義務感に満ちていました。ある時、知人から「社長になって楽しい?あなたのその姿を見て、ご両親やお兄さんは喜ぶ?あなたが犠牲になっているような気持にならないかい?あなたが楽しんでいる姿を見せるのが親孝行じゃないかい?」と言われ、涙が止まりませんでした。

 

 その通りだと思い、未来をイメージしたら楽しいだろうという考えでビジョン作りを始めましたが、うまくいきません。なぜビジョンを作るのか、その方向性へ進むのか深め、従業員にも理解してもらう必要がありました。

 

 そこで同友会の経営指針研究会に入り、ビジョンや指針の大切さ、そのもととなる自分の思いを再認識できた気がします。そして一度ビジョンは封印し、働き方改革や処遇の改善、幹部の世代交代に取り組んでからビジョン作りを再始動しています。未来をイメージできる環境をつくることが重要でした。

 

◆家族で地域を豊かに

 

 当社のビジョンは「平和園ファミリーを築こう」です。ファミリーは一人一人違いますがつながっている。だから個性を生かし、全員がかけがえのない1人として自分らしく生きようというメッセージです。

 

 実はもう一つ意味があり、平和園本体を親会社とした独立制度で、子会社をつなげていきます。従業員の可能性を伸ばす環境を作り、思う存分チャレンジできる風土と経営者の目を養えればと思っています。このビジョンを計画に起こした時、私が60歳を迎える8年後までに子会社は最低2社、年商を20億円とするのが目標となりました。

 

 平和園のミッションは「私たちは地域の豊かさを食を通じて実現する」です。それはやはり一人では達成できません。家族が手を取り合い、先人に学び、自分を磨いていくことが大切だと思います。

 

企業情報=1959年創業。資本金3000万円、従業員数220人。新田氏は1967年生まれ。