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【わが人生わが経営 107】(株)シモモト工芸社 代表取締役会長 下元小夜子さん(71)

2020年03月15日

 

人とのつながり礎に

看板製作 アイデアが技術

 

 下元さんは、1948(昭和23)年、旧端野町で生まれます。北見北斗高校卒業後、丸玉木材に就職し、経理などを担当していました。70(昭和45)年に前社長の下元忠義さんと結婚します。その頃、忠義さんは映画などの看板を製作する会社に勤めていました。翌71(昭和46)年に忠義さんが独立し、シモモト工芸社を創業。当初は広告・美術・看板施工を主に受注していました。

 

 下元さんは経理の経験があったため、給与の管理や社員の食事作りなどを通じて会社を支えます。「主人の前の勤務先から付いてきてくれた社員が2人いました。食べさせていけるか分からないから来なくていいと言いましたが、一生懸命頑張ってくれました」と創業当初を振り返ります。当時は徒弟制度が根強く、「社員を引き抜いた」と怒られたこともあったそうです。

 

 転機となったのは95(平成7)年、忠義さんの急逝でした(享年51歳)。持病のぜんそくと高血圧から脳出血で倒れ、救急車で病院に運ばれましたが、その日に亡くなりました。「あまりの突然の出来事に、災害に遭ったような感覚でした」

 

 下元さんは長男の陽司さん(現社長)や社員と話し合い、会社の継続を決めました。当時、札幌の屋外サイン製作会社に務めていた陽司さんは、会社を辞めて手伝ってくれることになりましたが、その会社の社長は大変面倒見が良く、鉄骨を切る機械や重機を無償で提供してくれるなど、応援してくれたと言います。陽司さんの入社をきっかけに、内装工事など建設業にも事業を拡大しました。

 

 ただ、営業の経験はゼロ。「無我夢中で大変と感じる時間もありませんでした。亡くなって1カ月後には名刺を作ってもらい、片っ端から営業に回りました」と下元さん。手探りの状況が続く中、同友会でのつながりが後押しになりました。

 

 同友会には、知り合いの経営者に誘われ、94(平成6)年に入会。後継者の育成に関する勉強会に参加し、会員同士で課題や解決策を共有し合いました。また、当時は国政選挙の看板づくりの仕事も多く、選挙を通じた人とのつながりもあり、就任のあいさつをする場所には困りませんでした。

 

 はじめは、営業と言われても何をしていいか分からない状態。保険のセールスに間違われることもありましたが、小まめに足を運ぶことで信頼関係を築くことができ、新規の契約も増えていきました。「長く取引している業者同士でもなれ合いになり、不平不満を抱えていることも知りました。悪く言えば仕事を取られたと思う人がいたかもしれませんが、自分のような新参者にもチャンスはあると思えるようになりました」

 

 同友会や選挙での〝人〟とのつながりが、経営の礎となりました。「まだ主人の事を覚えている人もいてありがたく感じます。今の時代は営業なしでは経営は難しい。昔は良い仕事をしていれば黙っていても仕事が来るという職人気質の時代でしたが、現代はSNSなど情報も多くスピード感が違う」と言います。

 

 自社の強みについても〝人材〟を挙げます。「どこに出しても恥ずかしくなく、周囲からもよく働くと言われます。夏祭りや菊まつり、厳寒の焼き肉まつりなど、地域イベントの設営も担当していますが、社員はイベントが終わるまで事故がないか目を配っています」

 

 そして「今の社員はアイデアが豊かです。看板製作の会社は数多くある中、これからはアイデアが技術になっていくと思います。そういう人が生き延びると感じます」

 

 同友会は忠義さんの逝去を機に95(平成7)年に一度退会しましたが、2008(平成20)年に再入会。きっかけは北見で開催された同友会主催のイベントで、ラジオ局で働いていた長女のあずささんが司会を担当したことでした。そこで懐かしい経営者仲間に再会し、再入会を決めました。

 

 現在、60歳以上のメンバーによるプラチナの会で親睦を深めています。「最近の傾向は、同友会でも自動車整備や企業へのコンサルティングなど、20代で起業する方も多く、女性や若い人の活躍が素晴らしいです」と次世代の活躍に期待を寄せます。

 

 同友会の魅力は、「分からないことがあっても、世間体を気にせず気軽に聞ける雰囲気があること。就業規則を自分で作ってみようと思ったのも同友会がきっかけです。さまざまなキャリアの方がいます。社労士の方に煩雑だが一度自分で作ってみた方が良いとアドバイスをくれました」と、辞書のような存在だと親しみを込めます。

 

㈱シモモト工芸社 代表取締役会長 下元 小夜子さん(71) オホーツク支部

しももと・さよこ=1948年6月5日、旧端野町出身。夫の後を継ぎ、2007年から現職

 

シモモト工芸社=1971年創業、81年法人化。屋内外デザイン設計施工、内装・外装工事のほか、オリジナルごみステーションの製作を手掛ける。資本金1000万円。従業員12人。