【わが人生わが経営 99】アール・アンド・イー　代表取締役 　北山茂一さん（７３）

2019年06月15日

　「”何かをしようとする時、簡単にそんなことできないと言うな”ということを、周囲に言い続けてきました。常に頭を使って考え、創造してほしいですね」自身が語る信念を貫くように、会社の主力である産業廃棄物事業だけでなく、環境に配慮する”再資源化”を意識したさまざまな研究・製品開発に取り組み続けてきました。

　北山さんは１９４５（昭和２０）年、東京都渋谷区で印刷業を営む両親のもとに生まれました。慶應義塾大学法学部を卒業後、凸版印刷（本社・東京）に入社。都内の大手出版社を中心とする顧客を対象に、営業マンとして１０年ほど過ごしました。

　そして、８３（昭和５８）年に３８歳で独立。出版、デザイン、広告、印刷、コンピューター入力を手掛ける会社を立ち上げました。「昔から好奇心が非常に強く、それが自分の原動力になっている」。その言葉を表すとおり、８０年代後半から９０年代前半にかけて社会をにぎわせていたゴミ問題をきっかけとして、産業廃棄物関連の機器に強く興味を持ちます。そして技術管理士など複数の資格を取得していきました。

　そうした北山さんのことを知った知人から、産業廃棄物事業を始めたいと協力を求められたことから、５０歳を迎えた９５（平成７）年、登別市へと移住することを決意しました。その後も、前身会社の倒産など苦労を重ねたものの、９８（平成１０）年にアール・アンド・イーを創業しました。

　捨てられたごみをただ埋め続ける従来の事業内容に疑問を抱いてきた北山さんは、地域の環境や未来を見据えて”再資源化”の視点を重視した事業展開を目指します。そしてこの方針に加え、自身が周りに話していた”挑戦してもいないのに諦めてはいけない”という考えを有言実行するかのように、自社で積極的な製品開発に取り組んでいきました。

　当時は建設重機のアーム先端のアタッチメント部品や、プラントで使用する破砕刃などは消耗が激しく、その交換によって作業効率の低下などを招いている状況にありました。そこで、室蘭工業大学と耐久性に優れた耐摩耗性金属の共同開発に着手しました。

　従来の耐摩耗性金属は表面処理を施しただけのものが多く、大幅な耐久性向上は望めませんでした。しかし、開発した製品は金属材料そのものを変成させてつくった「すり減らない金属」です。さらにリサイクルして何度も繰り返し使用できることも大きな特徴です。ガラス製品の破砕刃として使用した企業からは「これまでは１日の作業で消耗していたが、この製品は従来と比べて数十倍も減らなかった」と好評でした。

　このほかにも、網下気室型湿式比重選別システム「ＲＥＴＡＣ　ＪＩＧ（リタックジグ）」を、北海道大学と共同で開発。鉄やアルミなどの金属に加え、これまで選別が困難とされるプラスチック樹脂も選別が可能となりました。

　それは、選別方法に水を使用することで、種類が多く比重差が少ないプラスチックも高い精度で選別できます。また、水を用いることでクリーンなシステムとし、プラスチックを埋め立てずに燃料として再利用できる、サーマルリサイクルなどにもつながります。このように、自社で掲げてきた”再資源化”を常に意識し、自身の信念の実現にも満足することなく、新たな取り組みに挑戦してきました。

　本社がある登別市は、隣接する室蘭市などと合わせて「鉄のまち」のイメージで広く知られる地域です。北山さんはそのイメージどおり、「技術力を持った地域」と評価する一方、「技術を持つ会社は多いが、そのほとんどが歴史ある大手企業に依存している状況」と課題も指摘します。

　こうした現状を踏まえ、北山さんは、地域のためにここでも新たな取り組みに踏み出します。そして室工大や地元企業などで構成する異業種交流会であり、後に現在の産学交流プラザ「創造」へとつながる「室蘭地域環境産業推進コア」の設立に携わり、３期６年にわたり会長を務めることとなりました。

　さらに、２００９（平成２１）年にも地域の異業種企業で集まる「蘭参会」を発足させるなど、交流や研究を通じて企業の連携強化や地域の活性化にも尽力しました。「それぞれの企業がオンリーワンのものを持っているはず。それを大事にしてほしい」と、地元企業のさらなる活躍に期待を寄せています。

　同友会には知り合いの経営者の紹介を受け、０４年（平成１６）に入会しました。仕事の都合で会合にはあまり参加できていませんが、会員である仲間との交流を大切にしています。

■きたやま・しげかず　１９４５年９月６日、東京都出身。都内で会社員生活などを経て、９５年に登別市に移住。

■アール・アンド・イー＝本社・登別市。１９９８年に創業。産業廃棄物の再資源化・処理など。資本金２０００万円。従業員４３人。