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【わが人生わが経営98】勇気会医療法人北央病院CEO 清水昭子さん(77)

 「振り返れば人生まだ道半ば。身体的には老いを感じますが、つらいことがあっても、笑って一呼吸することで問題解決に向かう気力が湧いてきます。これこそが人生の積み重ね。いまが人生の黄金時代と意識して生きたいですね」

 

 札幌で、医師の多い家系に生まれた清水さん。そうした家庭環境もあって、医療とは別の世界を歩もうとしていました。しかし1963(昭和38)年、21歳で結婚したのを境に運命の歯車が回り始めます。結婚相手は、北海道大学で医師をしていた矩基雄さん。北大で外科の教授をしていた兄の門下生でした。

 

 結婚してすぐ清里町、釧路市と地方病院に赴任。二十歳を過ぎたばかり。慣れない土地での暮らしに寂しさもありましたが、清里では結婚祝いに馬が贈られるなど、地域の人の優しさに救われます。

 

 釧路労災病院に勤務した頃から心境に変化が訪れます。同病院は北大第一外科の関連病院としては最も多くの外科医が勤務し、昼夜問わず、道東一円の手術患者の対応に当たっていました。

 

 「その十数人の医師の胃袋を満たすのが、副院長の家内である私の役割だった」と清水さん。子供の手を引きながら差し入れを届けるようになります。こうした支えによってチームワークが固く結ばれ、数多くの手術を手掛けていきます。両親の姿に影響され、2人の子供さんも医師の道を歩むことになります。

 

 十数年に及ぶ地方病院での経験を生かし、79(昭和54)年10月に北央病院を開業します。白石、厚別地域では初めての外科病院。矩基雄さんは「地域に徹した病院」を目指し、切り傷、やけどから、胃がん、大腸がんまで幅広く対応し、高い評価を得ていきます。

 

 清水さんは運営、経営面を担い事務長を務め、夜は手術で使用した器具、手術衣の消毒までこなし、帰宅が深夜になることもありました。

 

 「医療経済は統制経済」と評され、猫の目のように変化する国の制度に合わせなければ、病院経営は成り立ちません。寝る間も惜しんで医療制度を学びました。その成果は、医業経営コンサルタントの認定取得につながります。

 

 地域医療を提供し続け、また職員の雇用を守るため、金融機関の誘いには乗らず、拡大路線は取ってきませんでした。

 

 国立病院、公立病院などの8割、民間病院の6割が赤字とされ、倒産した病院の多くは、患者の増加を見込んだ先行投資が原因。「夫は算術ではなく、仁術で行える医療をしたいと言い続けてきた。病める人を対象にした仕事であるが故、利潤を追求するものであってはならない。それを経営者の誇りとして大切にしている」

 

 現在、同病院は道内では数少ない血液、腫瘍を専門とする内科の病院へと衣替えしています。高齢化社会に伴って血液疾患に対するニーズが高まることは明白でしたが、以前は「血液専門の病院はつぶれる」というのが定説。採算を重視する病院が手掛けることはありませんでした。

 

 地域に必要とされる医療を追求し、また借り入れがなく、財務基盤が整っていたことから、今は亡き矩基雄さんが「当院がやるしかない」と決断しました。

 

 それから10年。離島を含めて道内各地から患者が訪れ、その大半が患者同士の口伝え、紹介だといいます。

 

 同友会には、経営者仲間から「系統だった勉強ができる」と紹介され、88(昭和63)年に入会しました。「周りの経営者を生きた教科書に、中小企業の実態や組織体制をつくる必要性を学んだ」と振り返ります。

 

 中小企業憲章や中小企業振興基本条例の制定に強い関心を持ち、2010(平成22)年に閣議決定された中小企業憲章に対し「一番恩恵を受けたのはドクターかもしれない」とみています。

 

 開業に当たっては医院で約3億円、病院では数十億円の借り入れが一般的で、その90%以上が銀行主導型。「憲章の影響もあって、経営者個人保証のガイドラインができ、銀行保証も変化してきた。これぞ憲章のおかげ」と続けます。

 

 病院経営は医(衣)、食、住の全てを管理することであり、医療を提供する側も患者側も常にベストの状態が求められます。それは並大抵のことではなく、「職員皆で助け合って病院を動かしている。互助の精神そのもの。感謝の気持ちしかない」と言います。

 

 だからこそ、「患者に寄り添う医療を提供するため、彼らと一緒に精いっぱい働きたい。そのためにはまだ成長しなければならない。日々挑戦し続けることが私の使命であり宿命」と。

 


 

【プロフィール】

 しみず・あきこ=1942年2月25日、札幌市出身。夫の医師と地方病院赴任を経て、79年に開院。2018年から現職。

 

 勇気会医療法人北央病院=1979年開院。診療科目は血液内科、内科、消化器内科、腫瘍内科。スタッフ数約100人。