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【わが経営わが人生 97】 (株)光合金製作所 取締役会長 井上一郎さん

寒冷地の水道を守る 研究に裏打ちされた技術

 

 水の凍結を防止する不凍給水栓の開発、製造、販売を通じて、寒冷地の水道を守ってきました。研究に裏打ちされた、同社の高い技術力には定評があります。創業者は北海道中小企業家同友会の創立にも奔走。親子3代、同友会で学び、そして共に歩んできました。

 

 井上さんは1934(昭和9)年に、小樽市に生まれます。室蘭工業大学を卒業後、59(昭和34)年から北海道大学工学部衛生工学科で助手を務め、下水道処理や河川、海の調査などに携わっていました。後に北大総長となる丹保憲仁さんと知り合うなど「学部の垣根を越えて多くの友人を得ることができた」と振り返ります。

 

 充実した日々を過ごす中、父の良次さんから会社を手伝ってほしいと要請されます。

 

 良次さんは47(昭和22)年、不凍給水栓を製造する光合金製作所を小樽で創業していました。それまでは主に本州のメーカーが製造する商品が流通していましたが、戦後の混乱で供給がストップ。氷点下10度以下になると故障する商品も多く、良次さんは自ら製造する道を選んでいました。

 

 ライバルメーカーには高度化する要求に応える研究室があり、また、当時は盛んだった組合運動に対応してもらうため、一郎さんに白羽の矢が立ったのです。64(昭和39)年、研究室長として入社します。

 

 研究室は発足したものの、「どこから手を付けるべきか悩んだ」といいます。そこで大企業の研究所に出向き、どのような研究をしているのか学ぶことから始めました。しかし、3年間は新商品を出すことができず、「無駄金を使っている」という批判にもさらされます。

 

 苦しみの末、67(昭和42)年に止水、排水が1度のバルブ操作でできる、新構造の不凍給水栓を世に出します。数年後には、今では一般的になっている電気によるリモートコントロールの水抜きシステムを開発しました。

 

 井上さんは「当初3年間はクレーム処理ばかりをやっていた。しかし、クレームの中にこそニーズがある。売れている商品は全て研究室で作ったもの」とその成果を語ります。現在は全社員の1割が研究部門に携わり、同社の根幹を成しています。

 

 組合対応でも手腕を発揮しました。当時、社内には2つの労働組合がありました。複数の組合がある場合、多くの会社は組合同士を衝突させ、弱体化させる方法を取っていました。しかし、井上さんは膝詰めで話し合い、両組合の融合を図ります。それは民主的で、極めて珍しいものでした。

 

 教育にも力を入れます。製造に必要な基礎学力を向上させるため、道が実施していた長期夜間研修で数十人の社員を学ばせます。また、中小企業では珍しく、昭和40年ごろから大卒者の採用も始めました。

 

 一方、父の良次さんは同時期、東京で中小企業家同友会全国協議会発足の動きがあることを耳にし、経営者仲間と北海道中小企業家同友会の創立に力を傾けていきます。「互いの経営体験を交流し、良い会社づくりを目指し、経営者としての見識を養う」という目的に共感しました。69(昭和44)年、会員30人で設立に至ります。

 

 井上さんは、良次さんから「一緒に勉強しよう」と誘われ、入会します。周りは先輩経営者ばかり。「悩みを打ち明けると、時には叱られながらも親身になって相談に乗ってくれた。同友会には足を向けて寝られない」と言います。

 

 73(昭和48)年の小樽支部(現、しりべし・小樽支部)発足にも尽力。支部長も8年間務め、青年部会、女性部会の活動を推進しました。

 

 今でも支部のある先輩の言葉を大切にしています。「蛇は頭から脱皮する。つまり頭が変わらないと尻尾が変わらない。だから、社員と共に勉強しなくてはならない」

 

 この精神は2004(平成16)年から社長を務める、長男の晃さんにも引き継がれています。率先して同友会大学を受講するのをはじめ、社員を例会に参加させるなど、同友会を積極的に活用しています。

 

 北海道同友会は11月に創立50周年を迎えます。会員は6000人をうかがうところまで増え、外部への発信力も増しています。井上さんはこうした姿をうれしく思う一方、「組織が大きくなると官僚的な部分が出てくる。初心を忘れてはならない」とあえて苦言を呈します。

 

 「なぜ同友会はできたのか。さまざまな取り組みの背景には何があったのか。数を追うだけではなく、創立時のことを繰り返し学ぶことも必要でしょう」と後輩達にエールを送っています。

 


 

【プロフィール】

いのうえ・いちろう 1934年2月16日、小樽市出身。北大勤務後、入社。代表取締役社長、代表取締役会長を経て2016年から現職。

 

光合金製作所=1947年創業。不凍給水栓、関連機器の開発、製造、販売。資本金6600万円。社員数110人