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【わが人生わが経営96】土田ボデー工業(株) 代表取締役 遊佐末廣さん(70)

2019年03月15日

 「良いサービスを続けて、お客様の信用を積み重ねたい。信用は無形の資本であると考えています。事業を継続するにはリピーター作りが大切で、まずは10年コツコツやってみる必要があります」

 

 遊佐さんは1948年、津別町で生まれました。高校時代は、自然豊かな環境で培った体力を生かし、応援団、柔道部の一員として活躍しました。高校を卒業した67年には、東京のボルト製造販売会社に就職し、品質管理などの仕事を担当しました。大手カーメーカーにも納品しており、「レベルの高い要求に応えることが勉強になった」と振り返ります。製造の現場を学ぶため、他社の工場なども多く見学しました。ここで「長く生き残っている会社は、品質の高い商品を作り続けている」と気付き、今でも会社経営の根幹になっています。

 

 また、将来的に電気関連の仕事をしたいと考えていた遊佐さんは、社会人として働く傍ら、夜間には電気工学関係の専門学校にも通っていました。ここでは、図面の読み方の基礎などを学んだといいます。

 

 6年ほどボルト製造販売会社で働いた後、家族の事情などによりオホーツクへUターンし、トラックや重機の部品を扱う会社の北見営業所で、営業として勤務することとなります。75年2月には結婚し、順調に人生を歩んでいたところでしたが、同年6月に北見営業所が撤退することとなり、離職を余儀なくされました。

 

 しかし、焦らず就職活動を行い、75年9月に営業職を募集していた土田ボデー工業に就職。「北見市の土地勘も人脈も何も無く、熱意だけの営業だった」と振り返ります。市内の法人を中心に果敢に飛び込み営業をかけ、車の点検・整備、車検などを売り込みました。

 

 7年ほど営業職を続けていましたが、転機が訪れます。同社のほかにも複数会社を経営していた前社長が、諸事情により同社の廃業を決めました。

 

 そこで遊佐さんは「うちの会社は、今までのお客様という無形の財産を持っている。事業を続けたいと思った」と83年に会社を引き継ぎ、自動車整備やさび止め処理などを軸に再スタートを切りました。

 

 サービス開始から現在まで、40年以上続けている車のさび止め処理について遊佐さんは「リピーターのお客様がいるから、やめることなく続けられている」と話しています。また、「うちの半分くらいの料金でさび止めをしているところもあるが、安さには理由がある。うちは安さではなく、本物にこだわってサービス品質の維持に努めている」と、これまでの経験で得た品質への思いを見せます。

 

 一方で、新・中古車と比べて顧客の固定化が期待できる車のリース事業や、ネットショップで購入したタイヤの取り付けなど、時代の変化に応じた新規事業にも挑戦しています。

 

 近年では、ナンバープレートのボルトのさびからくる汚れを防止するため、ステンレス製の飾りボルトの製造・販売も行っています。この製品には取り付け用に樹脂製のワッシャーも入っており、プレートが傷つかないようにする細かい気遣いが込められています。

 

 遊佐さんはこの商品の販売を通して、「地方中小企業は、資金力の面から大きな宣伝ができない。良いモノを作っても埋もれてしまう」と課題を指摘します。そんな中、「小さいモノや通信でやりとりできる商品・サービスなら、地方からでも都市部に販路を拡大できる」とし、現在もナンバープレートに関連した新商品の研究・開発に励んでいます。

 

 今まで続けてきた事業、時代に沿った新事業、遊佐さんはどちらも品質にこだわり、顧客の信頼を積み重ねることを第一に考え、経営を続けています。

 

 同友会には81年に入会。当時は北見市に事務局がなく、帯広からの勧誘を受けて加入することとなりました。遊佐さんは「会社を引き継いだ当時は、代表者として何をすべきか分からなかったが、同友会で多くを学んで救われた」と感謝しています。

 

 地方では、新商品を作るにしても「宣伝に必要なデザイナーやプレゼンターなど、他業種の人材不足により困ることもある。しかし、同友会を通して多くの会社と交流し、情報交換などによる協力体制を構築することで、一丸となって課題を解決できるのでは」と遊佐さんは考えています。

 

 「人と知り合うことが同友会活動で得られる最大の財産」と話し、今後も同友会で積極的に学び合いを続ける考えです。

 


【プロフィール】

 ゆさ・すえひろ 1948年8月23日、津別町出身。東京で就職後、オホーツクに戻り、同社に就職。83年に現在の代表取締役に。

 土田ボデー工業=1967年設立。自動車整備、防錆(ぼうせい)加工、リース、用品販売等。資本金1000万円。従業員5人(パート含む)