「経営者を叱る」 中同協相談役幹事 鋤柄 修 氏
2019年02月15日
10年先の会社像考える社員に
1月9日に開催された北海道同友会新年交礼会で、中同協相談役幹事の鋤柄修氏(エステム名誉会長、愛知)が「経営者を叱る~同友会と共に歩んだ先達からのエール」をテーマに、情熱を込めて経営体験を語りました。
■賞与が仇で労組ができた
私は1970年に友人が立ち上げた水処理施設のメンテナンス会社に専務として入社しました。夢が大事と、「年商3億円になったら、社長はクラウン、私はマークⅡに乗る」と話し合い、8年目に実現します。
業績は順調で社員に特別賞与を出すことにしました。2人で鉛筆なめなめ社員を評価し、差をつけて支給したところ、何と労働組合ができたのです。私も怒り心頭で悩みに悩んでいたある日、新聞で愛知同友会の経営指針成文化運動を知り入会したのが80年です。
熱心に参加していたら、地区会長に推されました。ところがある日の例会は参加が3人。こんな良い会になぜ来ない?私は案内を手に軒並み会員訪問を始めました。そのうち「鋤柄を見捨てるな!」と、六十数人のうち何と9割の会員が例会に参加してきました。
人間を信頼し、何が大切かを的確に“翻訳”して伝え、その気になることをじっと待つ。私はこうして同友会で鍛えられました。まさに「労使見解」の真髄に気付かされた思いでした。
当社は88年に経営理念を成文化し、創業20周年の90年には、全社員が12委員会に分かれ、1年半かけて経営指針書を見直し、併せて2001年ビジョンの策定も進めました。この時活躍したのは、98年から採用してきた新卒の社員たちでした。「人を生かす経営」を実践するためには、経営指針を根幹に据え、社員を頼れるパートナーとして育てていくことです。当社は毎年30人ほど新卒採用しており、10年先の会社像を考える社員を育てています。
現在の4代目社長は、取締役5人が一致して選んだ新卒1期生の女性経営者です。
■経営理念の発信と社内への浸透
よい会社・よい経営者・よい経営環境づくりが同友会の目的です。私はいつも同友会で「何のために経営していますか」と迫っていきます。これを重ねると経営者の考え方が練られ、その集大成が経営理念であることに気付いていくのです。当社は「水を中心とする環境文化と、安全で快適な自然環境の創造を通じて社会に貢献します」が経営理念です。これを外部発信するため、毎年環境フォーラムを開き、自社の取り組みを報告しています。新入社員は案内係として参加し、自社の理念を実体験しています。
経営指針の実践を朝礼で報告し合い、我がこととして考える場づくりをしてきました。同友会での学びを生かし、理念を浸透させていくことが重要です。朝礼で理念を唱和するだけでは浸透しません。
■同友会で胸を借りよう
同友会は道場です。よき師匠、よきライバルを見つけ、胸を借りるつもりでアプローチする。K(感性)D(度胸)D(努力)I(インテリジェンス)で、まずはスタートラインです。これをどう磨き実践するか?同友会で揉まれ、困ったときは先輩に相談する。私もそうして40年、同友会と歩んできたのです。
【企業概要】エステム=本社・名古屋市。資本金7000万円、従業員419人